よく「公認会計士と税理士の違いは?」という議論を耳にします。いずれかの人材を採用したいと検討している企業の中にも、この問題を気にしているケースは多いのではないでしょうか。
この記事では、公認会計士と税理士について業務内容や年収面の違い、採用時の注意点について解説します。
会計士か税理士の採用をお考えの方は、ぜひ最後までご一読ください。
会計士と税理士はどちらが優秀なのか?
公認会計士と税理士は比較基準が明確ではないため、優劣を決めることはできません。
ただし合格率を見ると、令和3年度では公認会計士の9.6%に対して税理士は18.8%という結果が出ています。このことから、試験の難易度で見れば、公認会計士のほうが狭き門と言えるかもしれません。また、公認会計士は税理士登録も可能なため、登録者の人数では2020年時点で公認会計士が約39,000名、税理士は約79,000名と税理士の登録者が多くなっています。
上記の理由から、「公認会計士が優れている」と思われるケースが多々あります。しかし、公認会計士と税理士は業務内容が違い、別の職業であるという認識を持つことが大切です。
会計士と税理士の明確な違いとは?
では、公認会計士と税理士はどう違うのでしょうか。明確な違いは下記の通りです。
違い① 試験内容・登録方法が異なる
いずれの資格も国家試験ですが、受験資格や試験内容が異なります。
公認会計士(※1) |
税理士(※2) | |
受験資格 |
なし |
学識・資格・職歴など細かい規定がある |
試験内容 |
短答式4科目、論文式6科目すべて合格 |
11科目から必修を含めた5科目合格 |
科目合格 |
短答式、論文合格科目は2年間有効 |
一度合格した科目は生涯有効 |
資格登録要件 |
実務経験2年以上 実務補習受講、修了考査合格 |
実務経験2年以上 |
なお、先ほど公認会計士は税理士登録が可能である点に触れましたが、これは公認会計士の試験に税務の内容が含まれるためです。
違い② 独占業務が異なる
公認会計士・税理士はいずれも、有資格者のみ取り扱いできる独占業務が存在します。
公認会計士の専門業務は、財務諸表の監査業務です。企業の財務書類の監査や内容証明については、公認会計士の有資格者しか取り扱いできません。
一方、税理士の独占業務は税務業務となります。税務書類作成・税務代理・税務相談に関しては、税理士のみが取り扱いできる業務となっています。
いずれの業種も財務上の業務となりますが、公認会計士は監査業務、税理士は税務業務の専門家と理解しておけば間違いないでしょう。
※1 出典:公認会計士試験について | 日本公認会計士協会
※2 出典:税理士の資格取得 - 日本税理士会連合会
会計士と税理士それぞれの平均年収は?
一般的に、税理士より公認会計士のほうが平均年収は高い傾向にあります。
いわゆる“BIG4”と呼ばれる大手法人が、監査法人と税理士事務所それぞれに存在しますが、BIG4内で比較すると監査法人の平均年収は約1,000万円、税理士事務所の平均年収は約800万円と、その差は200万円ほどあります。
もちろん、それぞれの業種内でも役職や年齢で大きく年収が変わってくるので、公認会計士のほうが高年収とは一概には言いきれません。これらの年収額は、おおよその目安として採用時の参考にすると良いでしょう。
なお、詳しい給与に関しては、当社の無料給与ガイドで細かな職種ごとの適正給与水準をご覧いただけます。
会計士や税理士の転職市場はどうなっているのか?
公認会計士や税理士は、採用市場においては専門性の高さから監査法人・会計事務所・税理士事務所など、一定の需要は維持されています。
また、一般企業でも公認会計士や税理士を採用する動きが年々高まりつつあります。この背景には、2021年より日本の会計基準を国際基準に合わせる目的で、上場企業において“新収益認識基準”の採用が必須となったことがあります。また、M&Aや海外進出を計画する企業、新規上場をめざす企業において、経理財務部門の強化が求められていることも、理由として挙げられるでしょう。
内部監査やコンプライアンスの強化、税務コンサルや国際税務などの財務業務を内製化するほうが、コストやスピード面で有利になる場面が多くなるため、このような変化があったとも考えられます。
こうした背景から、通常業務に加えて監査や税務といった独占業務のできる公認会計士や税理士は、一般企業においても重宝されます。CFO(最高財務責任者)として招き入れる企業もあり、実績のある公認会計士や税理士の競争率が非常に高いことは間違いありません。
監査法人や税理士事務所の需要維持に加え、一般企業の採用強化によって、これからますます公認会計士・税理士の需要が増えると予想されます。
会計士を採用する際に注意すべき点とは?
近年増えてきているのが、監査法人などでキャリアを積み、大企業やスタートアップ企業で社員として働く「企業内会計士」です。
業務内容は会計士の独占業務だけではなく、一般経理・財務業務、IR業務、企業内コンサルタントなど多岐にわたります。外部から監査する立場ではなく企業組織の一員として勤務することで、当事者として業務する経験とやりがいを感じられるでしょう。また、英会話のスキルを持っていれば海外企業との直接交渉ができるなど、さまざまな分野での活躍が期待でき、視野も広げられます。
会計士は会計・会計基準・監査の専門家としての知識レベルが一般社員より高く、自社の会計・財務部門の能力が全体的に高められるでしょう。
公認会計士の認知度を高め業界全体の活性化にもつながると考えられていることから、今後ますます企業内会計士の需要は高まると予想されます。
公認会計士は誰でも受験できるため、比較的若年層の方に人気の資格と言えます。しかし、たとえ公認会計士の資格を持っていても、企業が求められる仕事ができるとは限りません。専門性が高い人材でも、マネジメント能力の乏しいケースも考えられます。そのため、“年齢に応じたキャリアを身につけているか”、“自社の求めているポジションに合っているか”の両面が、採用する際のポイントとなります。
例えばCFOに準ずるようなポジションであれば、総合的な経験とマネジメント力を問われるでしょう。海外企業との折衝が必要であれば、国際的な会計基準の熟知と英語力も問われます。
逆に若年層の会計士を採用し長く働いてもらうことを求めている場合は、これまでのスキルよりもポテンシャルを重要視することで、会社にとって良い採用となるケースも考えられます。
採用する人材にはどのようなスキルが必須なのか、選考時に前職までの経歴をよく検討して、自社のポジションに適した人材を選ぶことが重要です。
税理士を採用する際に注意すべき点とは?
令和3年度の税理士試験結果(※3)によると、31歳以上の受験者数は約70%、そのうち41歳以上の受験者数が約38%と、高年齢層が多い傾向にあります。
税理士は公認会計士と異なり、科目試験制度のため合格まで数年かかること、受検者の高年齢化といった複数の要因があり、年齢層が全体的に高いという特徴があります。ゆえに資格を持っている若年層が採用市場に少ない、というのが注意点として挙げられます。
一般企業での転職であれば、30~40代の求職者はある程度の実務経験者と評価されますが、税理士業界においてはまだまだ若手に分類されます。
採用においては単に年齢だけで判断するのではなく、どういったキャリアパスを描いているのか、どういったスキルを有しているのかなど多方向に目を向けることが必要です。
また、公認会計士に合格して税理士登録している方についても、採用時には注意が必要です。公認会計士の試験は財務すべての知識を広く問われるため、税務に特化したものではありません。そのため税務面での知識が乏しく、実務に支障のあるケースも考えられます。
基本的には公認会計士の注意点と同様、採用に関しては「適材適所」を意識した選考が求められるでしょう。
※3 出典:令和3年度(第71回)税理士試験結果|国税庁
【まとめ】
公認会計士も税理士も専門職であり、それぞれ独占業務を持っています。また、監査と税務というまったく異なる業務に携わるため、「公認会計士と税理士どちらが優秀か」という尺度では比べられません。
公認会計士でも税理士でも、自社で必要な業務に就いてもらうためには、その業務にあったスキルのある人材を採用することが重要です。
ロバート・ハーフにご連絡いただければ、それぞれ適材適所における専門性の高い人材の紹介が可能です。公認会計士や税理士の採用にお悩みの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。