一般的に日本企業で使用される退職届は、記載事項が限定的なため具体的な情報を記載する必要はありません。しかし、外資系企業では退職届はフォーマットや記載項目が多様で、どのような表現で何を書くかは、退職者の選択にゆだねられます。しかし、その分内容をきちんと精査する必要があります。好印象が残る退職届を書くには、以下の5点に注意するとよいでしょう。
過去ではなく未来に焦点を当てる
退職届は雇用者に対して不公平な待遇を指摘したり、業務改善を求めたりするものではありません。過去に職場でどんな扱いを受けたとしても、退職届にその点を記載することは避けましょう。むしろ、退職届の内容は未来に焦点を当てたものにするとよいでしょう。退職者にとっても、雇用者にとっても、退職が新たな関係のスタートになるように話を持っていきましょう。
シンプルで明確な表現を心がける
退職理由に関して言及することは問題ありませんが、あまりに具体的な点を含めすぎて、内容が複雑なものにならないよう注意しましょう。退職理由は明確でシンプルに伝えるのが鉄則です。ただし、日本企業で通例の「一身上の都合」という事由は、外資系企業では一般的に使われません。退職を決断した理由のポイントを絞り、ロジカルかつニュートラルなトーンで文章を書くよう意識するとよいでしょう。
誠意をもって感謝を表す
日本人の社会的な特性として、退職する際に職場に迷惑をかけることに対する「申し訳なさ」から、謝罪が前面に出てしまう傾向があります。しかし、外資系企業で英語の退職届を書く場合には、謝罪の意よりも誠意をもって感謝を表すという姿勢が推奨されます。もちろん謝罪の表現を含めることは問題ありませんが、大げさな表現は避けたほうがよいでしょう。同時に、これまで業務を通して得た経験や仕事で関わった人々に対する感謝がしっかりと伝わるような文章を含めましょう。
感情的にならず冷静に
退職届では感情的で情緒的な表現は避けるのが無難です。会社に対する不平不満はもちろんですが、感謝の意であったとしても感情を前面に押し出した文章で伝える必要はありません。また、退職理由を説明する際も曖昧で主観的な表現は避け、冷静かつ客観的な記述を心がけましょう。
前向き表現を意識する
前述したように、退職は会社との「永遠のお別れ」ではありません。日本企業における深刻な人手不足を考えると、再雇用の機会がいつ、どのように開かれるか分かりません。そのことを念頭に置きつつ、今後もビジネス上の関係を継続し、前向きな支援をお願いしたい旨の一言を添えるとよいでしょう。また、在職中に得ることができた貴重な経験や習得した知識、スキルを今後どのように活かしていきたいと考えているか、仕事を通じて与えられた学びの機会に対する感謝を述べることも、好印象を残す大きなポイントとなります。
以上のポイントを押さえながら、丁寧に退職届を作成しましょう。ここでは、含めるべき項目と全体の構成について、テンプレート例を添えてご紹介します。
英語で退職届を書く際は、下記の項目を順番に沿って記載するのが一般的です。
日付(退職届の提出日)
受取人の名前(一般的には直属上司)
受取人の役職
会社名
会社の住所(市区町村、都道府県、郵便番号)
宛名(6.と同様)
退職する旨を伝える文章
退職日と最終勤務日についての情報
職場に対する感謝の意
退職事由
引継ぎについての情報
今後にむけてのメッセージ
締めの挨拶
自署(サイン)
氏名(活字)
退職事由を簡潔にまとめ、これまでの支援や機会創出についての具体的な感謝を述べ、引継ぎをしっかり丁寧に実施する準備がある点を強調すると、より好印象なものに仕上がります。
【テンプレート例】
[Date]
[Recipient's Name]
[Recipient's Position]
[Company Name]
[Company Address]
[City, State, Zip Code]
Dear [Recipient's Name],
Please accept this letter as formal notification of my resignation from [Your Position] at [Company Name]. My last day of employment will be [Your Last Day of Work], providing the standard [number of weeks] weeks' notice period.
I have thoroughly enjoyed my time at [Company Name] and am grateful for the opportunities for professional and personal development that I have been provided during my tenure. I am proud of the work accomplished by our team and appreciate the support and guidance provided by my colleagues and supervisors.
After careful consideration, I have decided to pursue a new opportunity that aligns more closely with my long-term career goals. While I am excited about this new chapter in my career, I will miss working with the talented team at [Company Name].
I am committed to ensuring a smooth transition during my remaining time at the company. Please let me know how I can assist in transferring my responsibilities or training a replacement. I am happy to provide assistance in any way possible to ensure a seamless handover.
I want to take this opportunity to express my gratitude for the support and encouragement I have received during my time at [Company Name]. I have learned a great deal and will always value my experience here.
Thank you once again for the opportunity to be a part of [Company Name]. I wish you and the entire team continued success in the future.
Sincerely,
[Your Signature]
[Your Name (print)]
【日本語訳(意訳)】
このたび、[会社名]を退職いたします。最終勤務日は[最終勤務日を入力]となり、通常通り[週数]間前の事前通知をいたします。
[会社名]での勤務は非常に充実したものであり、業務を通して専門的および個人的な成長の機会に恵まれたことを大変嬉しく思います。また、チームで達成した成果は誇れるものであり、同僚や上司からの支援と指導に心から感謝しています。
慎重な検討の結果、自身の長期的なキャリア目標とより一致する新しい機会を追求することを決意いたしました。この新しい人生の扉を開けることは楽しみではありますが、[会社名]の才能あるチームと仕事ができなくなることを残念に思っています。
在籍期間中、引継ぎが円滑に実施できるよう尽力いたします。業務の移行や後任者育成においてお手伝いできることがあれば、どうぞお知らせください。問題なく引継ぎが完了できるよう、可能な限りの支援を提供いたします。
[会社名]での勤務中にいただきました支援と激励の言葉に、改めて感謝の意を表したいと思います。ここで学んだ多くのこと、そして得た気づきと経験を、いつまでも大切にしていきたいと思います。
最後になりますが、[会社名]の一員となれた機会に感謝いたします。
今後の皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げます。
敬具
[自署(サイン)]
[氏名(活字)]