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2023年7月21日(金)、ロバート・ハーフのオフィスにて、マーケティング交流会イベント「Marketing HUB」が開催されました。
本イベントでは、さまざまな業界で活躍するマーケターが集い、「デジタルマーケティングにおける認知バイアス」をテーマにトークセッションが行われました。
トークセッションのゲストスピーカーには、フィリップ モリス インターナショナル(PMI)のデジタルエクスペリエンス・マネージャーであるマリオ・クレア氏と、Similarweb Japan株式会社のクライアントサクセス・リードを務める遠藤未央氏が登壇しました。データドリブンマーケティングにおいて、データ分析で陥りやすい失敗や、適切な意思決定をするために気をつけるべきポイントについてお話いただきました。
「認知バイアス」とは?見えていないデータの重要性
たばこ業界において変革を推進しつづける、フィリップ モリス インターナショナルのデジタルエクスペリエンス・マネージャーを務めるマリオ・クレア氏は、マーケターとして、自らの「認知バイアス」を意識することの重要性について話しました。
フィリップ モリス インターナショナル マリオ・クレア氏
「認知バイアス」とは、思い込みや先入観、固定概念によって、無意識に合理的でない判断をしてしまう心理現象のことを意味します。
クレア氏は、データ分析をする際に、特に注意すべきなのは、「生存バイアス」だと述べます。生存バイアスとは、リサーチや効果検証において、成功した例(生き残ったもの)だけをデータの対象とし、失敗した例(生き残らなかったもの)を無視することで、実状とは異なった判断をしてしまう現象を指します。成功したデータだけに焦点を当てることで、事実と異なった結論を導いてしまう可能性があるため、十分に気をつける必要があると強調しました。
「生存バイアス」の代表的な事例として、高層ビルから落下した猫に関する研究を上げ、「低い階に比べ、高い階から落下した猫の方が、生存率が高い」という誤った研究結果に至ってしまった原因について言及しました。それは、研究者たちがデータを収集する際に、落下したことで、負傷はしたものの「生き残った」猫の数だけに目を向け、高い階から落下し「生き残らなかった」猫の数をデータとして考慮をしていなかった点が原因であることを指摘しました。
それと同様に、データドリブンマーケティングを行う上でも、「慣れ親しんだ直帰率やページ数、セッション時間だけを見ていると、潜在的な価値を持つ新たな発見を見逃してしまう可能性がある」と述べ、正しい意思決定をするためには「目に見えているデータだけに目を向けるのではなく、見えていないデータにも注意を払うことが重要だ」と強調しました。
過去の成功にとらわれてはいけない
さらに、「過去にうまくいったことに、とらわれすぎてはいけない」とクレア氏は述べます。一度成功したステップを、良かれと思い、何度も繰り返すことは、新たな思わぬ発見や学びの機会の欠如につながるだけでなく、チーム内でも短期的な思考に陥ってしまい、新たなことに挑戦するマインドセットを失う恐れもあると語りました。
また、日々のマーケティング業務で触れるデータをもとに、新たなインサイトを見つけるための具体的なアドバイスとしては、クロス分析が役に立つと助言しました。今まで組み合わせたことがなかったデータをかけ合わせて、その結果を分析することで、思いがけない発見に出会うことがあるといいます。そして、そこから得られたインサイトは、認知バイアスを持っている他のメンバーやステークホルダーを説得しなければいけない際にも、説得力のある判断材料になると説明しました。
まずは自らの「認知バイアス」を認識することが第一歩
データ分析をする上で、誤った仮説や結論に陥らないようにするためには、まずは、自らの「認知バイアス」を認識し、自分の視点や考えが偏っているということを理解することが重要だといいます。「日々の行動を振り返り、変化を起こす勇気を持つことも大切です。知っているデータだけにこだわるのではなく、新しい情報や視点にも目を向け、自らの視野を広げることで、より豊かな知識と経験を得られると思います。」
最大限にデータを活用するためには、広い視点が大切
IT大国であるイスラエルに本社を置き、世界11カ所にオフィスを持つSimilarweb。その日本拠点であるSimilarweb Japan株式会社でクライアントサクセス・リードを務める遠藤 未央氏は、データを最大限に活用するためのポイントについて議論し、データドリブンマーケティングを行う上では、広い視点を持つことが重要だと述べました。
Similarweb Japan株式会社 遠藤 未央氏
遠藤氏は、自社のデータを適切に分析するためには、自社のデータだけでなく、競合と比較することが不可欠であり、同社が提供するツールを活用しながら、市場で自社がどのようなポジションにいるのかを把握する俯瞰的な視点が大切だと強調しました。
まず、最初のステップは、「自社の数字だけを見て、トラフィックが伸びているか否かを判断するのではなく、競合や市場に目を向け、自社がどのポジションにいるかを適切に理解すること」だといいます。さらに、その情報をもとに、「差別化、成長できそうな分野を特定し、オーディエンスがどんなことに関心があって、何について検索をしているのか、自社のウェブサイトでどのような行動をしているのか、など様々な視点から分析を行うことが重要」と述べました。また、市場動向も定期的にモニタリングし、常に市場の動き把握しておくことも有効的だと話しました。
遠藤氏は、経験豊富なマーケターであればあるほど、経験に依存してしまいがちなことも指摘しています。「過去の経験を参考にすることは悪いことではありませんが、データドリブンマーケティングで適切な意思決定をするためには、やはりデータが欠かせません。自社の取り組みを正しく理解するためにも、適切なデータの収集、分析、活用が最も重要です」
登壇者によるプレゼンテーションの後は、ネットワーキング・セッションが行われました。様々なバックグラウンドで、幅広い業界で活躍するマーケターが集まり、軽食を楽しみながら、情報交換を行いました。
ネットワーキングの様子
日本市場のマーケターとしてのスキルアップにつなげてほしい
今回のイベントを開催したマーケティング分野のリクルーティングディレクターを務めるファビオ・ガメリとリクルーティングマネジャーのサリー・デイヴィスは、イベントを開催した背景や日本市場の特徴について次のように話しました。
ファビオ:今回のイベントは、人脈づくりだけでなく、マーケターとしてのスキルアップや情報交換をする上で役立つのではないかと考え、開催に至りました。皆さんのキャリアの成長を応援するリクルーターの仕事の延長だと思っています。
特に日本市場は、とてもユニークな市場であり、マーケターとして消費者へリーチすることが非常に難しい国でもあります。例えば、CPV(Cost Per View)は、日本は常に最もコストがかかる国のひとつと言われています。そのため、海外企業が日本に進出する場合、どのように日本市場にローカライズしていくか、そしていかに適切にローカライゼーションができる人材を確保するかが最も重要な課題のひとつともいえるでしょう。
また、一見テクノロジーが進んでいるように見える日本ですが、デジタル化においては世界的にも遅れをとっている側面があります。マーケティング職においても、デジタル人材の育成や確保において多くの課題を抱えているのが現実です。コロナ禍で、多くの企業が販売手段を一斉にEコマースに移行したことで、マーケティング業界でも、今後もさらにデジタル領域における人材のニーズが増えると考えられています。
そのような状況の中、今回のイベントが、少しでも皆さんにとって今後のキャリアや業務においてヒントになっていれば嬉しいです。
リクルーティングディレクター ファビオ・ガメリ
サリー:このような形で、多種多様なバックグラウンド、年齢層のマーケターが集まり、自由に意見交換をする場を設けられたことは、とても有意義な機会になったと感じています。今後も、このようなイベントを四半期ごとに開催する予定です。マーケティング分野のさまざまなトピックを扱っていく予定ですので、どうぞお楽しみに!
リクルーティングマネジャー サリー・デイヴィス
まとめ
ロバート・ハーフでは、これからも定期的に、さまざまな分野で活躍されるプロフェッショナル向けにネットワーキングイベントを開催する予定です。今後のマーケティング分野のイベントや、転職をお考えの方は、お気軽にリクルーターにご連絡ください。
【お問い合わせ先】
マーケティング部門リクルーティングディレクター ファビオ・ガメリ
マーケティング部門リクルーティングマネジャー サリー・デイヴィス