企業文化は、人々が働く会社を選び、そこで長年働き続けるかどうかを決める重要な要素です。つまり、従業員にとって、その職場が自分に「合っている」と感じ、幸福感ややる気、生産性を高めていくことができるかどうかは、企業文化にかかっています。
問題は、大規模な在宅勤務が続くにつれ(たとえフルタイムでなくても)、企業文化を構成しているもののうち、変化可能な要素の多くが、かつてと同じ形、あるいは同じ程度で制御できなくなることです。ビジネスリーダーは、新型コロナウイルス感染症が勤務形態におよぼす影響を見極め、従業員にとって魅力的な企業文化を維持するためには何ができるかを検討する必要があります。
先を読むことが重要
新型コロナウイルス感染症の流行には、不確定な要素がありますが、この機会に未来に目を向け、企業文化をどう維持するかを検討してはいかがでしょうか。新型コロナウイルス感染症により、従業員は今まで以上に勤務地や勤務時間にとらわれない柔軟な働き方が当然と考えるようになり、リーダーに対して企業文化の見直しを求めています。
ここでは、勤務形態の変化が企業文化に与える影響とその対策をいくつかご紹介します。
従業員間の交流を深める
在宅勤務になった多くの従業員は、オフィスにいれば感じることができる周りのスタッフの存在や自然と聞こえてくる上司や同僚の声が懐かしくなります。それに加え、目の前ですぐに同僚と話すことができないため、たとえ同じプロジェクトや目標に取り組んでいても、孤独を感じてしまうことがあります。
そのような孤独感を軽減し、仲間意識を高めるためには、テクノロジーを活用してオフィス勤務時と同じような環境を作り出すことが重要です。たとえばビデオ会議で定期的に顔を合わせる機会を設けることを促進したり、共同作業ツールでプロジェクトを積極的に管理・運営したりすると良いでしょう。
「交代制のリモートワークパートナーシップ制度」も、現在の状況下では従業員間の絆を維持する手段の1つです。似たような仕事(違う仕事でも可)をする従業員がペアを組むことで、2人のコミュニケーションが密になり、協調と信頼が生まれるだけでなく、速やかな問題解決とスキルアップにもつながります。
自社の価値を繰り返し伝える
今やリモートワークが普通になりつつありますが、一方で、オフィス勤務はこれから数週間または数カ月かけて徐々に再開されると予想されます。このため、企業の中核的な価値を忘れてしまう従業員が出てくるかもしれません。 これを防ぐには、オンライン表彰式、リモート集会、オンラインイベント、社会的責任への取り組みなど、企業で働くことの意味をポジティブな方法で思い出させることが大切です。新型コロナウイルス感染症によって、必然的にこのような活動の多くに変化が生じました。しかし、いつもとは異なる不確定な時期だからこそ、企業の価値を繰り返し伝えることが重要なのです。
ビジネスリーダーは、当面の状況において自社の価値をどのように表現するかを検討し、それを効果的に伝え、実行する必要があります。例えば貴社が率直さと柔軟性に価値を置く企業であるならば、自社事業にどのような影響を受けているのか、現在、生じている変化と今後、想定される変化がどういったものであるのか、また、困難に直面している従業員をそれぞれサポートするためには企業としてどのような手段を取ることができるかなどについて、企業イントラネット、メール、オンライン会議などの通信チャネルを通じて、随時、リモートワークの従業員に伝えることをお勧めします。
前向きで、共感力が高く、反応の速いリーダー
従業員の意欲や満足度の低下も、企業にとっては当面の課題です。私生活でも仕事でも、多くの人が過去にないほどのストレスを感じています。したがって雇用主は、従業員の意欲を高めるために目的意識を持たせることを優先しましょう。 在宅で勤務する部下と出社する部下の両方に接する上司は、デジタル通信ツールを活用し、どこにいても全員がチームとしての活動や目標に取り組めるようにする必要があります。チームのターゲットを強調する、目標や重要な節目に達したことをオンラインで祝う、業績向上やキャリアアップについて1対1で話し合う機会を設けるといったことは必ず行いましょう。
前向きな姿勢や仲間意識の高さ、生産的な職場環境づくりに必要なソフトウェアスキルをリーダー自身が身をもって示すことも重要です。特にリーダーは、従業員一人ひとりの状況や問題に共感を示し、注意深く、かつスピーディーに彼らの問題解決や課題克服を助け、尚且つ、前向きな姿勢を維持する必要があります。なぜなら、これらすべてが「トップダウン」の効果を発揮できる可能性があるからです。
この危機的な状況下では、コミュニケーションを取り過ぎるということには決してなり得ません。
誰にとっても柔軟であることの意味
新型コロナウイルス感染症の拡大によって明確になったことが1つあるとすれば、それは9時から5時までといった標準的な就業時間での勤務を従業員全員に適用するのは難しいということです(さらには、リモートワークの作業環境が整っている場合に至っては、9時5時という就業時間での勤務を適用すること自体が不要と言えます)。
現在、多くの従業員は、家庭での育児や家事をやりくりしながら仕事をしています。それと同時に、日々の通勤時間がないことでワークライフバランスの向上を実感する人もいるでしょう。
個人のニーズに合わせた勤務時間やテレワークなど、柔軟な働き方をサポートする企業は、新型コロナウイルス感染症が収束した後も注目を集め続け、優秀な人材を引きつけながら、従業員の高い定着率を実現することができるでしょう。
この大規模な企業文化の転換に備えるため、企業各社は明確なポリシーを確立し、社全体におけるテクノロジーとトレーニングに投資することで、高い生産性の維持につながる効果的な勤務体制を確保する必要があります。
新型コロナウイルス感染症がもたらしたさまざまな制約により、今や企業文化の確立と維持に真剣に取り組む企業が有利な立場に立っています。経営者として、「この危機の後、どんなことで人々の記憶に残りたいか」ということを自問してみてください。それを決めるのは、リーダーであるあなたです。今回のような著しい変化に適応できれば、従業員に前向きに働いてもらうことだけでなく、未来の働き方にも十分に備えることが可能となるでしょう。