工場長の求人
工場で勤務している人は、工場長になることもキャリアアップの一つです。しかし、工場長とは具体的に何をするのか疑問を抱いている人もいるのではないでしょうか。本記事では、工場長の仕事内容や役割、年収、キャリアパスについて解説します。
工場長とは?
工場長とは、名前の通り工場内の最高責任者のことです。工場の運営全般の管理を行います。具体的には、生産計画の立案・管理、品質管理、コスト管理、労務管理、設備の維持管理、そして安全衛生管理などが含まれます。
また、従業員の指導やチームをまとめること、顧客との折衝も工場長の役目です。そのため、業界や製品に関する知識だけでなく、コミュニケーション能力やマネジメント能力も必要となります。会社ごとに工場の規模は異なりますが、どの工場にも工場長が一人います。
工場長の需要と将来性
近年、日本の製造業は国内よりも海外での売上によって収益を得ています。地域・事業の多角化により、高い経営レベルを求められるようになり、優れた知識やスキルを持つ工場長の需要は高いといえます。
製造業の市場規模は拡大傾向
日本の製造業の国内での売上高は、年間約400兆円と過去25年間においてほぼ横這い状態です。一方で海外での売上高や経常利益などは右肩上がりに伸びています。
日本の主要メーカーは海外売上比率が50%を超えているところがほとんどです。海外市場をいかに獲得できるかによって、利益を伸ばせるかが決まるといっても過言ではありません。
利益が上がるのに伴い従業員や設備投資も増え、それを管理する人が求められます。工場長のような管理に関わるポジションは需要が高く、特にグローバルな視点を持っている人は外部から受入れを行われるなど人材の獲得競争が激化しています。
参考元:経済産業省 - 製造業を巡る現状と課題
製造業の人材需要
製造業の就業者数は、2022年は1,044万人、2023年は1,055万人と増加しています。しかし、新型コロナウイルスが拡大する以前に比べると、人手不足感は依然強いままです。高齢就業者(65歳以上)数は増加していますが、2000年代と比べて若年就業者(34歳以下)数の減少が目立ちます。
製造業では指導者の需要が高い一方で、6割以上の事業所が「指導する人材が不足している」とのことです。経験豊富な管理職や現場で即戦力となる人材への需要が高まっています。
参考元:経済産業省 - 2024年版 ものづくり白書
製造業の採用トレンド・求められている人材
製造業の人材の需要が高まっている中、転職活動を支援するロバート・ハーフのサプライチェーン部門のディレクター 山下 拓氏は、製造業の採用トレンドや求められている人材について、以下のようにコメントしています。
グローバルな貿易の緊張や混乱は、日本のサプライチェーン分野の採用トレンドにどのような影響を与えていますか?
「サプライチェーン全体に大きな影響があり、グローバル企業や多国籍企業においては、既存のオペレーション管理よりも、物流戦略を含めたロジスティックス改革を担うポジションでの採用トレンドが強くなっています。」
サプライチェーンのポジションの採用において、企業が直面している主な課題は何ですか?また、それらの課題をどのように克服されていますか?
「現在、要件にマッチする候補者が不足しています。転職支援会社の活用や、ダイレクトリクルーティングの活用なども実施していますが、要件を満たす候補者の絶対数は長年不足したままです。常に候補者データベースを作る努力を継続する必要があります。」
日本のサプライチェーンセクターでは、国際的な才能の採用はどの程度行われていますか?
「グローバル環境でのビジネス経験や、ビジネスレベルの英語力を持っている候補者の採用は積極的に行われています。」
現在、日本のサプライチェーン部門で最も求められている具体的なスキルは何ですか?
「社内外のステークホルダーとの卓越した調整・交渉能力が最も必要なスキルです。」
近い将来、日本のサプライチェーンの採用風景にどのような変化が予測されますか?
「サプライチェーンは企業内でも益々重要度が増しています。他社や外国などと協力することは、経営戦略の重要な部分です。今後、単にスキルを有する候補者だけではなく、経営視点を持って業務を実行できる高いビジネススキルを持った人材のニーズが高まることが予測されます。」
工場ではどんなものを作る?
工場は製品やサービスを生産する場であり、業種では製造業に当たります。製造業で扱われる代表的なものは、以下の通りです。
食品・飲料(お菓子、ジュース、加工食品)
機械(自動車、家電製品、電子部品)
基礎素材製品(鉄鋼・金属製品、化学製品、紙加工品、木製品、プラスチック製品)
繊維・衣料品
建材・セメント
医薬品・バイオ医薬品
エネルギー関連(化石燃料の加工、電気やガソリンの製造)
工場長の仕事内容
工場長の仕事内容は、生産管理や品質管理、環境整備・安全管理、人員管理・人材育成、コスト管理など多岐にわたります。それぞれについて具体的に見ていきましょう。
生産管理
生産管理とは、いつまでにどの製品をどのくらい生産するか計画を立案し、円滑に実行することです。具体的には、製品の材料の調達や製造ラインの稼働状況の管理などを行います。進捗状況を見ながら納期に遅れないように調整したり、作業中のトラブルを最小限に抑えたりすることも役割の一つです。
品質管理
製品の品質を維持・向上させることも工場長の仕事です。高品質を維持できるように、品質基準を設定し、その基準を達成できるようなプロセスを構築します。具体的には、従業員が作業マニュアルを守っているか確認したり、設備を調整したりします。品質に問題が発生した場合は、直ちに原因を特定し、再発防止策を講じます。
環境整備・安全管理
工場にはさまざまな機械や原料があるので、従業員が安全に働ける職場環境を整えることも工場長の仕事の一つです。労働安全衛生法に基づいた機械点検などで安全性を確保し、緊急時の対応ルールを従業員に遵守させます。
人員管理・人材育成
人材管理や人材育成など、従業員のマネジメントも工場長の仕事です。従業員と積極的にコミュニケーションを取りながらモチベーションを高め、適切な人員を配置し、チーム全体のパフォーマンスの最大化を目指します。また、研修や教育プログラムを実施して従業員のスキルを向上させ、リーダーの育成にも関わります。
コスト管理
コストを最適化し、利益を確保することも工場長の仕事です。製造工程における無駄を排除し、エネルギーや原料などを効率よく使用する方法を模索します。従業員の得意不得意を理解し、適材適所に配置することもコスト管理の一つといえます。
工場長の年収
年収ガイドを見る
ロバート・ハーフの自社データでは、工場長の年収は1,200万〜1,800万円と1,000万円を超える高収入です。経験やスキル、資格の有無などによっても変わります。
以下に関連職種の平均年収もご紹介しますので、参考にしてみてください。
また給与水準や採用市場に関する最新動向や、転職情報に役立つ情報をまとめた「年収ガイド」もぜひ参考にしてください。
職種
| 経験値が浅い場合
| 平均的な経験値の場万円合
| 優れた経験値がある場合
|
輸送・配送管理マネージャー
| 600万円
| 800万円
| 1,000万円
|
倉庫管理アソシエイト
| 350万円
| 400万円
| 450万円
|
倉庫管理マネージャー
| 500万円
| 700万円
| 900万円
|
オペレーショナルエクセレンス・マネージャー
| 1,000万円
| 1,200万円
| 1,300万円
|
品質管理・品質保証スタッフ
| 500万円
| 700万円
| 800万円
|
品質管理・品質保証マネージャー
| 1,000万円
| 1,200万円
| 1,300万円
|
サプライヤー品質管理
| 600万円
| 650万円
| 750万円
|
包材開発
| 600万円
| 700万円
| 800万円
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工場長に必要なスキル・知識
工場長には幅広いスキルと専門的な知識が求められます。工場長に必要なスキル・知識について、具体的に見ていきましょう。
製造現場の専門知識・技術
工場長は、現場の生産管理やコスト管理を行うため、設備や製品の製造過程など製造現場に関する専門知識が必要不可欠です。特に、製造工程の効率化やトラブル発生の対応などには、現場での実務経験が求められます。近年では工場のDX化・自動化の動きもあり、最新技術の知識も必要です。
経営能力
工場長は、生産管理やコスト管理する上で経営者としての視点が求められます。効率性を上げ収益を確保するためには、工場を経営資源として最大限に活用するためのスキルが求められます。目先の課題やノルマをこなすだけでなく、長期的なビジョンのもと判断できるスキルが必要です。会社によっては役員が工場長として働くこともあります。
生産管理・安全管理スキル
生産プロセスを効率的に進めるには、納期や品質基準の遵守など生産管理スキルが不可欠です。生産管理が上手くいかないときは、計画や人員を見直し、改善案を考えなければなりません。
また、従業員の安全を確保し、労災を未然に防ぐ安全管理も工場長の仕事です。そのため、労働安全衛生法や環境規制などの知識も求められます。
マネジメント
工場の生産性を高めるためには、機械だけでなく人材管理(マネジメント)も必要です。従業員の操作ミスやモチベーションの低下などは、生産性を下げる要因になります。従業員とのコミュニケーションを密に取り、全員が同じ方向を目指せるように工場全体を管理・統率することが大切です。工場長の仕事は多岐にわたるため、優秀な部下を育て自分の業務をある程度任せることも必要になります。
問題解決能力
工場内では、生産工程や設備、従業員同士でさまざまな問題が発生します。工場長は、これらの問題の原因を特定し、再発防止策を講じる分析力も求められます。従業員から話を聞き出す必要もあるため、普段からコミュニケーションをとり信頼関係を築いておくことも大切です。
交渉力
工場を運営する上で、顧客やサプライーなどと交渉する機会が頻繁にあります。最大限の利益を確保するために、価格や納期などの交渉力が必要です。一方的にこちらの要望だけを伝えるのではなく、互いが納得し合えるような回答を導き出すことで長期的に良好な関係を築いていきます。特に製造業では海外市場での売上が重要となっているため、外部との交渉力は重要です。
工場長の仕事に役立つ資格
工場長になるために必須の資格はありません。しかし、資格を取得することで転職時やキャリアアップに有利になります。本記事では5つの資格を紹介しますので、参考にしてください。
安全管理者
安全管理者は、労働安全衛生法に基づき、工場内で安全管理を担当するための資格です。常時50人以上の労働者がいる環境ごとに、安全管理者の配属が義務づけられています。作業場を巡視し、労災が発生しないように作業環境の安全確保やリスクアセスメントを行うのが役割です。
安全管理者の資格を取得するには、厚生労働大臣が定める研修を修了するか、労働安全コンサルタントの試験に合格する必要があります。工場内の環境整備に関する知識を得ることができ、従業員の安全を守ることが可能です。
衛生管理者
衛生管理者は、公益財団法人安全衛生技術試験協会が提供している衛生管理者免許の保持者です。常時50人以上の労働者がいる環境では、配属が義務づけられています。作業環境の改善や、健康診断の実施など従業員の健康管理を行います。
衛生管理者免許は国家資格で、第一種と第二種があり、受験するには学歴や実務経験が必要になります。例えば、「10年以上労働衛生の実務に従事した経験がある」「一般的な大学を卒業し、1年以上の労働衛生の実務経験がある」などです。第一種衛生管理者の合格率は46%、第二種衛生管理者は49.6%と高難易度の試験ではありませんので、ぜひ挑戦してみてください。
生産管理オペレーション
生産管理オペレーションは、中央職業能力開発協会(JAVADA)が提供している資格です。生産工程の管理や設備管理、納期管理、環境管理などの運用管理に関する知識を深め、工場運営の効率化に直結するスキルを磨くことができます。レベルは2級・3級の2つに分かれています。
どちらも専門知識が身についており、生産システムの統制・運用業務などの実務経験がある人におすすめです。資格を取得すれば、生産スケジュールの最適化や在庫管理など、工場運営の効率化に直結するスキルを磨くことができます。
生産管理プランニング
生産管理プランニングも、中央職業能力開発協会が提供している資格です。生産管理オペレーションは運用面の知識が中心ですが、生産管理プランニングは生産システムの設計・計画に関する知識も求められます。こちらも2級と3級に分かれており、納期管理や環境管理が問われるのも生産管理オペレーションと同様です。
なお、生産管理の基礎知識を磨きたい人は、生産管理オペレーション・プランニングよりも難易度の低い「BASIC級 生産管理」もありますので、自分のレベルに合った資格を取得しましょう。
QC検定
QC検定は、日本規格協会グループ(JSA GROUP)が提供している品質管理の知識を問う検定です。品質管理の知識は、品質問題発生時の迅速な対応や品質改善プロジェクトの推進などに役立てることができます。1級から4級まで4つのレベルに分かれており、4級は品質管理を初めて学ぶ人などが対象で、1級は品質管理活動のリーダーを目指す人が対象ですので、自分のレベルに合わせて受験する級を選択してください。
各級によって身につく知識は異なりますが、QC検定を取得することで問題発生時の迅速な対応や品質改善プロジェクトの推進に役立ちます。
工場長になるには?
工場長になるためには、製造現場での経験を積みながら、段階的にスキルや知識を習得していくことが必要です。まずは工場の現場で実務経験を積み、工場の設備や機械についての専門知識を高めます。
次に現場管理職として、問題の解決や現場スタッフのマネジメントに関わります。技術的なことだけでなく、従業員の安全を守ることにも視野を広げていきます。この段階でコミュニケーション力を発揮し従業員からの信頼を得ることが、工場長への道につながるでしょう。
それから係長や課長といった管理職を経験することで、経営者としての視点を身につけます。現場管理職からも現場の様子を聞き、コスト面や従業員の働きやすさの面を考慮し、より効率的に工場全体を稼働するにはどうしたらいいか考え、実行します。また、他の会社と共同で製品開発を行うこともあるため、自社周辺の利益も考慮しながら持続的な関係を築いていくことも必要です。
近年では、デジタル化が進んでおり、最新技術の進化や市場の変化への対応が求められます。どのような技術の導入が必要かを判断することも、工場長の重要な役割です。
工場長のキャリアパス
工場長としてのスキルや経験を活かして、さまざまなキャリアパスが図れます。製造部門全体の責任者や、経営者の一員として昇格するケースもあります。
また、複数の工場を統括することも求められる役割の一つです。日本国内の工場経営の問題点として、単体の工場の経営により権力が集中し、作業が非効率的になることが挙げられます。製造業のグローバル化の流れもあり、国内外にある複数の工場を管理する能力が今後さらに必要となるでしょう。
ほかにも、技術的な専門性を磨き上げ「生産技術のコンサルタント」や「品質管理のスペシャリスト」として活躍することも可能です。
工場長の仕事のやりがいと課題
工場長の仕事は裁量が大きくやりがいを持って働けますが、プレッシャーのかかる仕事です。工場長の仕事のやりがいと課題について見ていきましょう。
工場長の仕事のやりがい・魅力
工場長の仕事のやりがいは、自らの管理や指揮が工場全体の生産性向上や成果に直結することです。例えば、生産工程においてコスト削減を図り、利益の増加につながれば達成感を得られるでしょう。
工場長として成果を出せば会社に大きく貢献したことになりますので、経営陣や従業員から信頼を得られることも魅力の一つです。また、人材育成によってチームや個人の成長を支え、パフォーマンスの向上につながれば、やりがいを感じられます。
責任が多い分、裁量も大きくなるので、やりたいことを直接反映できることがやりがいだといえます。
工場長の仕事の厳しさ・大変さ
工場長は、工場内の最高責任者ですので、多くの責任が伴います。まずは、納期や生産目標を確実に達成させる責任です。納期の遅れは顧客との信頼関係を悪化させ、生産目標の未達は会社の利益を悪化させます。
トラブルが発生した際には迅速な対応が求められます。特に設備の故障や生産遅延が発生すると、同時に多方面からの対応を進めなければなりません。
また、従業員同士の人間関係やモチベーション管理にも注意が必要です。従業員の不平不満を聞き、問題解決に労力を使うこともあります。
工場長が直面している課題
工場長が直面している課題は、技術革新に対応することです。例えば、AIやloTなどの最先端技術の導入やそれに伴う知識とスキルが求められます。最先端技術の導入は、工場全体の効率を向上させるのに寄与します。しかし、導入のために研修を設定したり、セキュリティ対策をしたりするなど、手間もかかります。
また、人材不足も課題の一つです。少子高齢化が進み、優秀な人材確保が難しくなっています。工場長は、働きやすい職場環境を構築し人材を定着させたり、作業を自動化したりするなど工夫が必要です。
工場長に向いてる人の特徴は?
工場長に向いている人の特徴は以下の通りです。
コミュニケーション能力が高い
リーダーシップがある
柔軟に対応できる
高い向上心と学び続ける姿勢がある
責任感が強い
工場長は従業員や顧客、経営陣などさまざまな人と関わります。異なる立場や視点を持つ相手と柔軟に意思疎通を図り、信頼関係を構築するにはコミュニケーション能力が必要です。それと同時に、従業員を引っ張っていくためにリーダーシップも欠かせません。指示を出すためには責任ある決断力も重要です。
また、製造業の技術や市場は日々進化します。新しい生産技術や管理手法を積極的に取り入れ、工場の競争力を向上させるためには常に学び続ける姿勢も大切です。
工場長に関するよくある質問
工場長に関するよくある質問を見ていきましょう。
工場長と部長はどちらが偉いですか?
工場長と部長のどちらが偉いかは、会社の組織構造や業界によって異なります。そのため、どちらも責任のある管理職ですが、一概にどちらが偉いかは判断できません。
工場における一般的な役職は、下から順に平社員、班長、主任、係長、課長、部長、工場長、常務、専務、副社長、社長(会長)です。
会社によって部長の指示を受けて工場長が動くケースもあれば、工場長が経営幹部と直接連携する場合もあります。
工場長のキャリアに有利な知識やスキルは?
製造業は海外進出するケースが多くあり、海外赴任になるケースも考えられます。そのため、英語や中国語など他言語を覚えておくと良いでしょう。また、製造方法や設備の技術、製品の特性といった製造現場の専門知識も工場長のキャリアに有利になります。
まとめ
レジュメを提出して、相談する
工場長の仕事内容や役割、年収、キャリアパスなどについて解説しました。工場長は裁量が大きい分責任もありますが、やりがいを持って働けます。製造業は指導する人材が不足しているため、経験豊富な管理職や現場で即戦力となる人材の需要が高いです。
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