日本の労働市場は売手市場が続いており、多くの企業が常に人手不足の課題を抱えています。また、最近では、終身雇用制度で定年まで同じ企業に勤めるという働き方も変化してきており、優秀な人材ほど新たなチャンスとキャリアアップを求めて転職する傾向が高まっています。
このように人材競争が激化する中、企業は優秀な人材を確保するために、働きがいや福利厚生の提供、キャリア形成のサポートなど積極的なEVP(従業員価値提案)の導入を迫られています。
今回は、EVPの重要性と、優秀な人材の確保に成功するための具体的なヒントをご紹介します。そして、優秀な人材を惹きつけ、離職率を抑えながら、競争力のある企業づくりを実現するために、EVPがどのように役立つのかを考察します。
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EVPとは?
EVPは、Employee Value Propositionの頭文字をとった略語で、「従業員価値提案」と訳されます。これは、企業が従業員に対して提供する価値を意味します。具体的には、報酬体系や福利厚生だけでなく、企業文化、キャリアパス、ワークライフバランス、成長機会、社会貢献活動、リーダーシップ支援など、さまざまな要素が含まれます。
従業員は、自分のスキルや才能を活かせる職場環境や、成長を支援してくれる企業に魅力を感じるため、EVPを導入することで、従業員の満足度の向上、人材の流出を減少させることなどが多くのメリットが期待できます。つまり、EVPは単なる人材確保の手段に留まらず、企業の成長や競争力の維持にも関わる重要な要素と言えます。
昨今、多くの企業が慢性的な人材不足に陥っており、2人に1人が転職する時代(※)といわれている日本では、EVPはこれからさらに重要視されると考えられます。
※ リスクモンスター株式会社「社会人の転職事情アンケート」調査
なぜ、EVPが重要なのか?5つのメリット
では、EVPを策定することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。下記で、5つメリットをご紹介します。
- 優秀な人材を惹きつける:
労働人口の減少や転職市場の活性化などにより、どの業界においても優秀な人材を採用することがますます難しくなっています。魅力的なEVPを構築することで、競合他社との差別化を図り、自社と価値観の合う優秀な人材を惹きつけることができます。
- 優秀な人材を維持する:
一度採用した優秀な人材を自社に定着させることも、企業にとって重要な課題です。現在、日本でも転職者数は増加傾向にあり、従業員の離職率が上昇しています。すなわち、優秀な人材が競合他社に流れてしまう可能性が高まっています。そのため、従業員のエンゲージメント、ロイヤリティ、生産性を高め、リテンションを強化させるためにも、魅力的なEVPの構築は欠かせません。
- 生産性を向上させる:
EVPは、従業員の満足度やモチベーションの向上を高める上でも有効的です。報酬や評価制度を通じて、従業員が自らの努力が適切に評価されていると感じるようなEVP施策を実施することで、従業員のエンゲージメントを高め、より生産的な職場環境を創り出します。
- 経営理念や行動指針を定着させる:
企業が掲げるミッションと一貫したEVP施策を持つことで、企業の文化や価値観を明文化し、浸透させることも期待できます。従業員がこれらに共感し、共通の価値観を持つことで、チームの統一感を醸成し、長期的に強固な組織文化を形成することができます。
- ブランドイメージを向上させる:
優れたEVPを構築することは、社会的な信頼を築くための重要な要素の一つにもなります。報酬や福利厚生など魅力的なEVP施策を用いて、従業員を大切にしていることを発信することができれば、他社と差別化を図り、候補者やステークホルダーに対して、ブランドイメージを向上することができます。また、企業の社会的責任(ESG)についても重要性が増す中、魅力的なビジョンや価値観を提示し、働きやすい環境を提供していることは、企業のイメージ向上や持続可能性にも寄与します。
EVPの設定項目や施策の具体例
EVPの構築において、企業が検討するべき項目や施策は多岐にわたります。どのような価値を提供すればいいのか、考慮するべき項目や施策の具体例を下記に紹介します。
- 成果に応じた報酬制度の構築: 成果や貢献に応じた公正な報酬制度を導入し、従業員のモチベーションを高めましょう。
- 福利厚生の充実化: 保険各種、休暇制度、育児をサポートする制度など、従業員のニーズに合わせた魅力的な福利厚生を提供しましょう。
- キャリアパスの明確化: 従業員がスキルアップやキャリアアップを実現できるよう、明確なキャリアパスの設計、キャリア開発プログラムを導入しましょう。
- 研修プログラムの導入: 専門スキルやリーダーシップ能力の向上をサポートする研修プログラムを提供し、従業員の成長を促進しましょう。
- ワークライフバランスのサポート: リモートワークやフレックスタイム制度など、柔軟な働き方を提供し、従業員が仕事とプライベートをうまく調整できる職場環境を整備しましょう。
- オフィス環境の改善: 最新設備の導入など、従業員が快適に、効率よく仕事を行えるような職場環境を整備しましょう。
- コミュニケーションの促進: オープンなコミュニケーションを奨励し、従業員の意見やフィードバックを尊重する企業文化を築きましょう。
- 企業文化と価値観の強化: チームワーク、多様性の尊重などを重視した企業文化を醸成し、従業員が安心して、誇りを持って働ける環境を作りましょう。
- 社会貢献活動への参加: ボランティア活動や地域社会への貢献を支援し、従業員が企業の社会的責任を共有できるような取り組みを推進しましょう。
これらのEVPの項目や施策に関する例を参考にして、自社のEVPを構築し、優秀な人材の確保や長期的なビジネスの成長を促進させましょう。EVPの構築は継続的なプロセスであり、従業員のニーズや市場の変化に応じて、常にアップデートを行うことも重要です。
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