さまざな業界でDX化やAIの導入が進み、ITコンサルタントの需要が高まっています。本記事では、ITコンサルタントの仕事内容や年収、必要なスキル、などを徹底解説しています。ITコンサルタントを目指している人や転職を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
情報処理推進機構(IPA)が実施した「デジタル時代のスキル変革などに関する調査(2023年度)」によれば、企業のDXを推進する人材量に対する過不足感が年々増加傾向にあります。
特に従業員が1,000名以下の中小企業でのDXを推進する人材不足が、大きく目立ちました。そのため、DX推進にも関わるITコンサルタントは、将来的に見ても需要は高いといえるでしょう。
出典:デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2023年度)
ITコンサルタントとは、クライアントの抱える課題をヒアリングし、ITを活用して解決に導く職種です。具体的には、クライアントへの課題解決の提案やシステム導入などがあります。場合によっては、システムの構築・保守などにも関わりますが、実務ではなくマネージャーの視点でプロジェクト全体の流れを把握するような立ち位置です。
クライアントの課題には、「販売業務のコスト削減をしたい」「社内の人手不足を解消したい」「昨年から売上が落ちているが、原因がわからない」といったものがあります。ITコンサルタントは、企業から経営状況や業務フロー、現在使用しているITツールなどをヒアリングし、その情報を分析して課題の原因を探ります。原因を突き止めたら、課題解決に適したITツールの導入を提案することなどが主な業務です。
企業が抱える課題は多種多様であり、それに応じたITを選べるようになるには幅広いIT知識が欠かせません。また、プロジェクトチームを管理するマネジメントスキルや、データから課題を見つけ出す分析スキルも必要です。
ITコンサルタントの主な役割は、クライアントからヒアリングを行い、どのようなシステムを取り入れるか経営戦略のプロジェクトを立てることです。完成したプロジェクト計画を基にして、システムの要件定義・設計から開発・構築、運用・保守などに携わるのが、システムエンジニアです。
つまり、ITコンサルタントの「プロジェクト作り」の段階は、システムエンジニアの「要件定義・設計」より上流工程(前の段階)に当たります。システムエンジニアも要件定義においてクライアントからのヒアリングを行いますが、これはシステムの詳細についてであり、プロジェクト全体のことではありません。
またITコンサルタントとシステムエンジニアでは、重要視されるスキルも異なります。ITコンサルタントはクライアント側の立場として経営の知識や説得力がより求められ、システムエンジニアはベンダー側の立場としてシステムの知識やプログラム管理能力など、より実践的なITスキルが必要です。
ITコンサルタントは、ITツールを利用してクライアントの課題解決をサポートしますが、扱うITツールによって呼び名が変わります。それぞれ見ていきましょう。
SAPとは、ドイツの会社が提供しているビジネスソフトウェアです。販売管理や財務会計処理などの機能があります。SAPコンサルタントは、SAPに関する専門的な知識を持ち、SAPパッケージの導入から運用までを行います。
世界的に利用者が多いSAPのコンサルタントは、海外でも需要の高い職種といえるでしょう。
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、統合基幹業務システムと呼ばれるもので、販売や会計など経営に関する業務を一括管理します。ERPコンサルタントは、ERPパッケージの導入・運用を行い、クライアントの課題解決を支援するコンサルタントです。
SAPコンサルタントと似ていますが、SAP社のERPパッケージの導入に特化しているSAPコンサルタントに対し、ERPコンサルタントは各ベンダーが開発したERPパッケージを活用します。
SCM(Supply Chain Management)とは、製品の原料調達から消費者の手元に届くまでの管理を指します。SCMコンサルタントは、このサプライチェーンの全プロセスを効率化し、リスク管理やコスト削減対策などをするITコンサルタントです。現状を把握するためのデータ分析や市場調査から、課題解決のためのSCMシステムの導入・運用までを担当します。
サプライチェーンの最適化は、企業の利益に直結する重要な要素のため、需要の高い職種といえるでしょう。
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客関係管理と訳され、企業と顧客との関係性やそれを管理するツールのことです。顧客情報を一元化し、請求書の発行や問い合わせ対応に役立てます。CRMコンサルタントは、クライアントの顧客関係管理を効率化するためにCRMシステムの導入・運用を支援します。
CRMに関する知識はもちろん、マーケティングスキルやITトレンドへの知見も必要なスキルです。
PMO(Project Management Office)とは、組織内にある複数のプロジェクトを横断的に管理する職種のことで、ITツールではありません。PMOはPMOコンサルタントとも呼ばれ、プロジェクトが適切に運営できるようPM(プロジェクト・マネージャー)をサポートします。具体的にはスケジュール管理、人材・コスト管理、トラブルへの対処などを担い、プロジェクトの質を向上させます。
近年では業務のDX化やさまざまな経営戦略によって、大型のプロジェクトが進みやすく需要のある職種だといえるでしょう。
ITコンサルタントの仕事内容は、クライアントのヒアリングからプロジェクトの実行までで、大きく分けると3つに分かれます。一連の流れを見ていきましょう。
まず、クライアントから経営課題を聞き出したうえで、経営戦略や業務内容などについてヒアリングします。それから、ヒアリングした内容を分析し、クライアントの抱える問題を洗い出します。クライアントが提示した経営課題だけにとらわれず、より広い視野から見逃されていた課題を探り当てるスキルが必要です。
分析結果を踏まえて行うのが、課題解決に向けた提案です。現状の課題をわかりやすく説明することで、解決案に説得力が出ます。適切なITツールとその活用方法も説明し、クライアントの業務環境に合っているか確認します。
プロジェクト計画が成立したら、プロジェクトチームを結成し、プロジェクトの進捗管理などマネジメント業務を担当します。クライアントとチームの橋渡し役になり、問題があったらすぐに対処します。判断力とともに、さまざまな人と協力し信頼関係を構築する力が必要です。
プロジェクトのマネジメントは、プロジェクトマネージャーが担う場合もあります。
ITコンサルタントの職位は、低いほうから順に「アナリスト」「コンサルタント」「マネージャー」の3つがあります。それぞれの仕事内容について見ていきましょう。
アナリストは、調査・分析・情報収集などを行う職位です。先輩コンサルタントとともにクライアントのヒアリングを行ったり、競合の動きを調査したりするなどして集めた情報を資料にまとめ、分析します。基本的には指示された通りに情報収集や調査を行いますが、答えのない生のデータを扱うため分析力が問われます。
コンサルタントは、クライアントにヒアリングし、経営課題の解決に向けて提案する職位です。ヒアリングした内容から課題解決の仮説を立て、システムのテスト計画を策定します。効率よく業務が回るよう、アナリストにも調査の依頼を出すなど作業を分担します。プロジェクトの大半の部分を担当するため、豊富な経営知識とITの知識が必要です。
マネージャーは、プロジェクトの予算や進捗管理など、プロジェクト全体を統括する職位です。適切な人員を配置し、コンサルタントが作成した提案の事前チェックなども行います。クライアントとも接するため、問題に対処する論理的思考力やコンサルタントスキルが求められます。これまでに、マネジメントやプロジェクト管理などの業務に携わった経験が必要です。
ロバート・ハーフの自社データでは、ITコンサルタント(SAP/ERP/CRMコンサルタント)の平均年収は500万〜900万円です。キャリアアップし、経験やスキルを身につけていけば、5,000万円の高年収が期待できます
以下に関連職種の平均年収もご紹介しますので、参考にしてみてください。
給与水準や採用市場に関する最新動向や、転職情報に役立つ情報をまとめた「2024年版 年収ガイド」もぜひ参考にしてください。
職種
| 経験値が浅い場合
| 平均的な経験値の場合
| 優れた経験値がある場合
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テクノロジー/DXコンサルタント
| 550万円
| 650万円
| 750万円
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テクノロジー/DXシニアコンサルタント
| 750万円
| 850万円
| 950万円
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テクノロジー/DXマネージャー
| 1,100万円
| 1,200万円
| 1,300万円
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テクノロジー/DXシニアマネージャー
| 1,500万円
| 1,800万円
| 2,000万円
|
テクノロジー/DXシニアディレクター
| 1,700万円
| 2,200万円
| 2,700万円
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テクノロジー/DXパートナー
| 3,000万円
| 4,000万円
| 5,000万円
|
SAP/ERP/CRMシニアコンサルタント
| 800万円
| 900万円
| 1,100万円
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SAP/ERP/CRM マネージャー
| 1,100万円
| 1,300万円
| 1,500万円
|
SAP/ERP/CRMシニアマネージャー
| 1,600万円
| 1,700万円
| 2,000万円
|
SAP/ERP/CRMシニアディレクター
| 2,000万円
| 2,300万円
| 2,700万円
|
SAP/ERP/CRMパートナー
| 2,700万円
| 4,000万円
| 5,000万円
|
アナリスト(戦略コンサルティング)
| 500万円
| 650万円
| 800万円
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コンサルタント(戦略コンサルティング)
| 800万円
| 1,200万円
| 1,500万円
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パートナー(戦略コンサルティング)
| 4,000万円
| 6,000万円
| 8,000万円
|
ITコンサルタントに必要な知識は多くあります。その中でも重要な以下の4つのスキルについて解説します。
ITコンサルタントは、IT技術を活用してクライアントの課題解決に向けた提案をします。そのため、ITに関する全般的な知識が必須です。各ITツールの機能や導入のしやすさを把握しておきます。
クライアントごとに抱えている課題が異なるため、業界の動きを常に追い、最新のIT知識を継続的に習得することも大切です。
円滑にプロジェクトが進むように、チームをまとめるマネジメントスキルが必要です。メンバーのモチベーションの維持やプロジェクトの管理を担当します。
ITコンサルタントが直接システム開発に関わることは少ないですが、プロジェクトの関係者とコミュニケーションを取りながら、予定通り進んでいるか確認していきます。
クライアントのヒアリングから提案、チームメンバーのモチベーション維持、完成品のプレゼンテーションなど、さまざまな場面においてコミュニケーション力が必要です。
コミュニケーションスキルには、相手にわかりやすく伝える力だけでなく、相手に寄り添い理解しようとする傾聴力も含まれます。情報や要望をきちんと聞き出すことで、正確に現状把握ができ、その後の提案がスムーズになります。根拠のある企画提案は、クライアントとの共感や適切な人員配置につながるでしょう。
ITコンサルタントは、クライアントに提案を納得してもらうために、道筋を立ててわかりやすく伝える必要があります。分析した結果を整理し、物事の因果関係を順序立てられる、論理的思考スキルが必要になります。仮説を論理的に検証できれば、より信頼できる提案となるでしょう。
ITコンサルタントの仕事で役立つ資格を紹介します。
ITストラテジストは、IT技術を活用して事業を高度化できるスキルを証明するための資格試験です。情報処理推進機構(IPA)が実施しています。試験内容は、IT関連の知識・システム戦略・マネジメント力などで、情報技術の選択について自身の経験が問われることもあります。
受験条件はありませんが、高度情報処理技術者試験に当たるため難易度が高く、2024年度春期の合格率は15.8%でした。
ITコーディネータ(ITC)は、2001年に経済産業省(当時は通商産業省)よって設けられた、ITコーディネータを名乗ることができる資格です。
ITコーディネータとは、企業の課題解決のため、IT経営とDX化を促進するプロフェッショナルです。ITコンサルタントよりも経営に軸を置いているため、ビジネス知識は欠かせません。累計1.5万人以上の資格取得実績があり、全国で約7,000名の有資格者が活躍しています(2024年3月末時点)。
ITコーディネータ資格を取得するには、ITコーディネータ試験の合格と、ケース研修の受講、そして資格認定登録申請が必要です。2021年1月~2月に実施された第44回のITコーディネータ試験の合格率は、65.7%でした。
ケース研修の修了には、eラーニング動画講義の視聴や集合研修に5日以上出席するなどの条件を満たす必要があります。集合研修はオンラインでも開催しています。
ITストラテジストに比べ難易度が低いため、経営力を強化しながら徐々にITコンサルタントを目指す人におすすめの資格です。
プロジェクトマネージャ試験は、情報処理推進機構(IPA)が実施している試験で、プロジェクトの適切な計画・実行・管理に関する理解や実践能力を証明する試験です。ITストラテジストと同様で、受験条件が設けられていないため、誰でも受験できます。
ただし、高度情報処理技術者試験に該当するため取得難易度は高く、2023年度秋期に実施した試験では合格率13.5%となっています。
中小企業診断士は、中小企業に経営のアドバイスをする国家資格の職種です。中小企業の経営戦略、マーケティング、人事労務、新事業の立ち上げ、経営情報システムなど、経営知識を証明できます。
試験は年に1回行われ、「1次試験・2次試験」の2部に分かれています。1次試験は選択式の筆記試験で、2次試験は筆記及び口述試験となります。2023年の合格率は、1次試験が29.6%で、2次試験が18.9%です。
ITコンサルタントだけでなく、さまざまな分野のコンサルタントが資格を保持しており、汎用性に優れた資格です。
SAP認定コンサルタント資格は、SAP社が公式に認定している資格であり、2024年8月時点では91の資格があります。SAPのコンサルタントやプログラマーなどが対象です。コンサルタント関連だけでも71の資格があるため、SAPに特化した専門的な知識や技術力を証明できます。
難易度は「アソシエイト」「スペシャリスト」「プロフェッショナル」の3つに分かれています。無料の学習リソースやインストラクターによるオンライントレーニングも提供されており、試験対策にも有効です。また、オンラインで24時間365日、受験できますので、忙しい人も受験しやすくなっています。
ITコンサルタントに向いている人は、以下のような特徴があります。
ITコンサルタントの世界では、知識量がカギとなります。豊富な知識を有していれば、クライアントに提供できる情報も増え、より最適なサービスを提供できます。最新のIT技術や分析方法に関心を持つことはもちろん、クライアントが属する業界の知識、新しいコンサルティング手法など、常に学ぶ姿勢が必要です。
研修に参加したり、専門書を購入したりする方法があります。業界やITの動きに追いつくために、人脈を増やすことにも注力しましょう。
ITコンサルタントは、プロジェクト全体に関わることもあるため、企画から運用までの流れを把握したうえで、重要なポイントを押さえられる力が必要です。クライアントやエンジニアなど多くの人と関わりますが、全ての人の意見に対応することはできません。プロジェクトの成功のために何が一番求められているか判断力が物をいいます。
俯瞰的な視点を持つためには、クライアント側とシステムを構築する側の中間的な立場で考える必要があります。業務をする際に必ず守りたいことなど、自分なりのルールを作っておくと、判断に迷いがなくなるでしょう。
ITコンサルタントは、クライアントやエンジニアなどさまざまな人と関わり、コミュニケーションを取る機会が多くあります。特にクライアントからのヒアリングは、プロジェクトの方向性を決める重要な部分であり、プロジェクトを提案する際に意図がわかるよう伝えることも主な業務です。内容を確認したり段階を踏まえて提案の説明をしたりするなど、誤解のないように意思疎通を図ることを心がけると良いでしょう。
意思決定を下した際は、その決断に至った過程を説明をすることも必要です。全ての人の意に沿わない決定であるとしても、説明を重ね理解を求めることで、関係者との信頼構築につながります。日ごろからコミュニケーションを取り、積極的に意見を交換できるような関係性を目指しましょう。
ITコンサルタントは、クライアントが抱える問題を解決する提案をしなければなりません。実行の後押しができるような提案をするには、その提案に至った根拠がはっきり見えることです。データ分析によって課題を見い出す分析能力の高い人が、ITコンサルタントに向いているでしょう。
一見して解決不可能と思える問題でも、データのカテゴリや組み合わせを変えてみるなど繰り返し分析を続け、出口を見つけ出す粘り強さも必要です。
ITコンサルタントになるには、特に資格は必要ありませんが、ITと経営に関する知識やマネジメントスキルが不可欠です。そのため、エンジニアやコンサルタント関係の業務、または経営領域での業務が活かせるでしょう。特にシステムエンジニアはITコンサルタントやクライアントとの関わりがあるため、ITコンサルタントの仕事にも活かしやすいといえます。
コンサルティングファームやITプロジェクトを扱う大手ベンダーなど、ITコンサルタントが所属する会社に就職する方法もありますが、ITコンサルタントの必要性に気づき、会社の新たな職種として設置するのも1つの手です。知識やスキルを磨くためにも、ITコーディネータや中小企業診断士などの資格を取っておくと良いでしょう。
ITコンサルタントのキャリアパスは、「昇進」「転職」「独立」の3つです。それぞれについて見ていきましょう。
所属している会社内でキャリアアップを目指す手段です。経験の浅い間は、アナリストとして資料や仕様書の作成を担当することになります。そこから経験と実績を積めば、コンサルタント、マネージャーとステップアップが可能です。
プロジェクト全体の管理など新たなスキルが必要になりますが、やりがいや達成感は増えるでしょう。
最終的にはパートナー(共同経営者)を目指す道もあります。クライアントの新規開拓や、中長期的な経営に関わってみたい人におすすめです。
ITコンサルタントで身につけたスキルは、他のコンサルティング企業に転職しても十分に活かせます。語学力があれば外資系のコンサルティング企業への道も開けます。また、事業会社の経営企画や戦略部門で活躍することも可能です。社内専属のITコンサルタントのような立ち位置で、IT技術を使った課題解決ができるでしょう。
ITコンサルタントの経験や知識は、幅広い職種で活躍できます。転職先でお困りの方は、外資系・日系グローバル企業への転職サポートを受けてみることをおすすめします。
フリーランスとして独立することも可能です。フリーランスになると、収入は不安定になり自身でクライアントを開拓する必要がありますが、専門分野を自由に選ぶことができます。会社に所属していると指示されたとおりに行わなくてはなりませんが、フリーランスなら得意分野を極め、クライアントとの接し方も決められます。場合によっては、収入アップにつながるでしょう。
人脈を広げ頼れるパートナーを増やしておくこと、時間が自由な分だけ自己管理ができることが、フリーランスを続けていくコツです。
ITコンサルタントは、さまざまな業界で活躍できるチャンスがある職種です。ITコンサルタントになるためには、絶対に必要な資格はありませんが、ITに関する最低限の知識やマネジメントスキルなどが必要です。キャリアアップ次第では、年収5,000万円も期待できます。まずは、本サイトを利用して情報収集から始めましょう。