プロジェクトを成功に導くために、不可欠な存在であるプロジェクトマネージャーですが、近年の複雑化するビジネスにおいて需要が高まっています。
必要なスキルが幅広く責任の重い職業ではありますが、その分達成感が大きくやりがいもあります。
本記事では、プロジェクトマネージャーの役割や仕事内容、年収についてご紹介します。
昨今、あらゆる業界で企業のDX化が進み、日本国内のDX市場は今後も右肩上がりで成長すると予想されています。具体的には、2030年度には6兆5195億円へと急速に拡大すると見込まれています。IT技術が発展し、AIやIoT、データサイエンスが欠かせない社会では、プロジェクト自体がより複雑化していることから、高度なプロジェクトを管理、推進できるプロジェクトマネージャーの需要が、今まで以上に高まっています。
出典:DX王 日本と海外のDX動向
プロジェクトマネージャー(Project Manager)とは、プロジェクトチームの責任者としてチームをまとめる存在です。明確な定義はないため企業や業務内容によって担当箇所が異なりますが、IT業界においてはシステム開発の進行管理が役割に当たります。システム開発はクライアントの要望に沿ったものであり、人事評価をクラウド上で行うシステム作りや医療機関のDX化などが一例です。
プロジェクトマネージャーの役割としては、プロジェクトの計画作成、スケジュール管理、進捗状況や課題の報告など幅広く、プロジェクトの進行には欠かせない重要な職種です。チームメンバーだけでなく、経営陣やクライアントともコミュニケーションを取り、プロジェクト全体をまとめあげます。
■ プロジェクトマネージャーのやりがい
プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体を管理する責任ある仕事です。プレッシャーが大きい反面、プロジェクトをやり遂げたときは、他のポジションでは味わえないほどの達成感を感じるでしょう。
またプロジェクトは、チームメンバーや経営陣などさまざまな人との協力が必要です。プロジェクトを進めていく中で、他者の成長や人間関係の充実感を得られることもやりがいの1つといえるでしょう。
■ プロジェクトマネージャー(PM)とプロジェクトリーダー(PL)の違い
プロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダーの違いは、プロジェクトマネージャーはプロジェクト全体を管理するのに対し、プロジェクトリーダーは現場監督として現場のチームをまとめるという点です。
プロジェクトマネージャーは、クライアントの要望を聞き、計画からレビューまで一貫して担当します。スケジュール管理や進捗状況の報告などもプロジェクトマネージャーの仕事です。
一方、プロジェクトリーダーは、プロジェクト内でいくつかに分かれたチームのリーダーに当たり、自身も現場作業することもあります。現場で部下の教育や指導をしながら、プロジェクトを進行させるのがプロジェクトリーダーの仕事です。
■ プロジェクトマネージャー(PM)とプロダクトマネージャー(PdM)の違い
プロジェクトマネージャーとプロダクトマネージャーの違いは、プロジェクトマネージャーは「プロジェクトの進行」に焦点を当てていますが、プロダクトマネージャーは「製品戦略」に重きを置いている点です。
プロジェクトマネージャーは、クライアントの目標をシステム開発の面から達成させるために何をすればいいか考え、実行します。計画作成からリスク管理やスケジュール管理など、ステークホルダーとコミュニケーションを取りながら、プロジェクトがスムーズに進行するよう努めます。
一方、プロダクトマネージャーは、製品開発が主な仕事です。市場調査や顧客分析、競合調査などをしながら、長期的な目線で時代やニーズに合った製品を考え、マネージャーとして最終決定を下します。
プロジェクトマネージャーの役割・仕事内容は、以下の3つです。
■ プロジェクトの計画作成
クライアントのニーズに合わせて、どのようなシステムやサービスを作るのか計画します。具体的には、システムの開発規模、予算、必要な人員、作業環境などの設定です。
■ スケジュール管理
計画した内容通りに作業が進むよう、スケジュール管理するのも役割の1つです。具体的には、チームメンバーにプロジェクトの目標とゴール、スケジュール、納期を伝え、チーム全員が同じ方向に進めるように情報共有します。
クライアントからの要望や変更があったときは、チームメンバーと共有するとともに、必要に応じてスケジュールを調整します。
■ 進捗状況や課題の報告
進捗状況を各部門に確認し、経営陣やスポンサーなどに報告する役割も担います。社内と社外を橋渡ししていく中でプロジェクトに関する懸念点や不安点を払拭していき、チームの団結力を高めます。
プロジェクトの現在の状況をまとめたものが、進捗報告書(ステータスレポート)です。チームメンバーだけでなく、直接プロジェクトに参加していない関係者とも情報を共有し、問題の発生を未然に防ぎます。
また、プロジェクト終了後にプロジェクトを見直すことも大切な業務です。プロジェクトの課題を洗い出して関係者と共有し、次回に活かします。
プロジェクトマネージャーを目指すにあたって、求人例を見ておくと必要なスキルや転職活動などのイメージがつかみやすくなります。
とくに応募資格で自身にスキルが備わっているか確かめましょう。以下で、プロジェクトマネージャーの具体的な求人例を紹介します。
職種:プロジェクトマネージャー
想定年収:800~1,400万円
職務内容:
・導入プロジェクトの提案と詳細なスケジュールを評価・監督し、実現可能性と費用対効果を確認する。
・発注書受領後のソリューションプロセスを監督し、顧客、エンジニアリングチーム、アナリスト、プロジェクトマネージャーと効果的に連携できるようにする。
・詳細なプランニング、スケジューリング、ユーザー受入テスト(UAT)を含むデプロイメントの実行をチームに指示し、トップクラスの実装と顧客満足を達成する。
・利害関係者や顧客からのフィードバックチャネルを確立・維持し、洞察力を巧みに活用してプロジェクト管理プロセスを改善し、製品の改善と開発を推進する。
・アソシエイト・プロジェクト・マネージャー・プログラムを通じて、プロジェクト・マネージャー・チームの育成をリードする。
応募資格:
・企業ソフトウェアまたはコンサルティング会社でのプロジェクトマネジメント経験5年以上。
・チームマネジメントの経験が3年以上あり、パフォーマンスの高いチームをインスパイアし、育成し、統率する能力があること。
・大規模なソフトウェアソリューションまたは産業機器の導入に関する幅広い技術的理解と経験。
・多様なチームやステークホルダーとの効果的なコミュニケーションを促進する日本語と英語のビジネスレベルの能力。
・新しいツールや技術に素早く適応し、習得する能力を実証し、継続的な専門能力開発に取り組む姿勢。
・部門間を超えた環境でプロジェクトをリードし、結果を出した経験。
勤務地:東京23区
デジタル化の進んだ現代においてプロジェクトマネージャーは、デジタル技術に関わることがほとんどです。デジタルプロジェクトマネージャーの給与やIT職種の年収について、まとめていますので参考にしてください。
プロジェクトマネージャーには、多様なスキルが求められます。その中でもとくに必要なスキルは、以下の4つのスキルです。
■ マネジメントスキル
プロジェクトマネージャーの業務は、マネジメントです。プロジェクトの進捗状況を加味しながら、人や予算、スケジュールなどを管理します。マネジメントする対象が多いことから、全体を見る力が必要です。社内でだれがどのようなスキルを持っているかを把握しておくことでクライアントのニーズに適切に応じることができ、社員の成長にもつながります。
俯瞰的に物事を分析し、プロジェクトにとっての最善策を考えられる人は、「プロジェクトマネージャー」に向いているといえます。
■ コミュニケーションスキル
プロジェクトマネージャーは、チームメンバーだけでなくクライアントなどさまざまな人と関わりがある仕事です。計画を円滑に進めるためにも、それぞれと良好な関係を築けるコミュニケーションスキルが必要になります。
単に話すのが得意なら良いというわけではありません。意見を聞いたり、わかりやすく情報を伝えたりするなど、相手の状況をくみ取れる力が必要です。
■ 問題解決能力
プロジェクトを進める中では、大小に関わらず問題が発生します。問題によってはスケジュールや人員を見直すことにもなってしまいます。そのため、早期に問題の原因を突き止め、解決・改善できる力が必要です。
あらかじめ潜在的なリスクを想定し準備しておくことも、プロジェクトマネージャーにとって必要なスキルの1つです。
■ テクノロジーに関するスキル
プロジェクトマネージャーは、担当するプロジェクトに関する専門のIT知識や技術力が必須といえます。テクノロジーに関する知識や技術を持ち合わせていることで、クライアントの要望に合った計画を作成できます。人員配置をする際にも役立つでしょう。
ロバート・ハーフ・ジャパンのエンタープライズテクノロジー&コンサルティング部門のディビジョンディレクターであるオスカー・タケナカ氏は、「IT分野では、高い専門性が求められています。市場で最も需要が高いのは、専門的な知識・経験と、優れた対人スキルを兼ね備えた人材です」と述べます。
プロジェクトマネージャーになる上で必須な資格はありません。ただし、プロジェクトマネージャーの仕事で役立つ資格は、以下の4つがあります。
■ プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が実施している試験で、合格すると国家資格が得られます。プロジェクトマネージャーに必要なマネジメント力の他、コンピュータシステムやセキュリティなどテクノロジーに関する知識も問われます。
ITに関する国家資格の中で、「高度情報処理技術者試験に分類されており、難易度は最高ランクのレベル4のです。試験勉強の過程でプロジェクトマネージャーとしての心構えと高い知識が身につき、仕事の土台を築き上げる上では最適な資格だといえます。
■ PMP®資格
PMP®(Project Management Professional)資格は、アメリカで設立されたプロジェクトマネジメント協会が認定している国際資格です。PMP®資格は世界中で認知されている資格であるため、あらゆる業界や国においても役立ちます。日本語で受験可能です。
ただし、受講するには以下の条件を満たしている必要があります。
大卒(4年制)
・過去 8 年以内に 36 か月のプロジェクト主導経験
・35時間のプロジェクト管理教育/トレーニングまたはCAPM認定®
高卒・中卒
・過去 8 年以内に 60 か月のプロジェクト主導経験
・35時間のプロジェクト管理教育/トレーニングまたはCAPM認定®
参考元:プロジェクトマネジメントプロフェッショナル(PMP)®認定
PMP®資格は国家資格ではありませんが、海外に向けてもスキルが証明できるため、海外企業と取引がある人におすすめの資格です。
■ P2M資格
P2M資格は、特定非営利活動法人日本プロジェクトマネジメント協会が認定している資格です。プログラムマネジャーとプロジェクトマネジャーの2つに必要な「実践能力」が備わっていることを証明します。
資格は以下の4種類あり、5年ごとに更新が必要です。
PMC(プロジェクトマネジメント・コーディネータ)
PMS(プロジェクトマネジメント・スペシャリスト)
PMR(プログラムマネジャー・レジスタード)
PMA(プログラムマネジメント・アーキテクト)
PMCとPMSはP2Mに関する知識を、PMRとPMAは実践力を測ります。プロジェクトマネージャーとしての幅を広げたい人におすすめの資格です。
■ PMOスペシャリスト™認定資格
PMOスペシャリスト™認定資格は、一般社団法人日本PMO協会が認定している資格です。プロジェクトマネジメントを補佐するPMO(Project Management Office)を担う能力があることを証明できます。
資格には、PMOの知識を証明するPMOスペシャリスト(★)™と、技術を証明するPMOスペシャリスト(★★)™の2種類あります(2024年7月時点)。
映像型eラーニングでの学習とオンライン試験を導入しているため、忙しい人でも受講しやすいのが特徴です。プロジェクトマネージャ試験に比べて、難易度は高くないため、プロジェクトマネージャーになる準備のステップとしておすすめの資格です。
プロジェクトマネージャーに向いている人は、以下の4つの特徴があります。
■ 俯瞰的に物事を見られる
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの責任者として計画から実行まで、全体像を把握していることが必須です。俯瞰的に物事を捉え、プロジェクトが円滑に進むよう導きます。全体にとっての利益を優先しなくてはならない立場のため、感情に必要以上に流されない論理的な思考力が必要です。
■ 柔軟な対応ができる
計画した通りに、プロジェクトが進むとは限りません。クライアントからの新たな要望や問題の発生、メンバーの体調不良などにより、スケジュールを見直すこともあります。余裕をもった計画にしておくなど、万が一に備えることも大切です。
■ ストレス耐性が高い
プロジェクトマネージャーは、全体の指揮を執る責任者であるため、プレッシャーがつきものです。経営陣やクライアントなど、さまざまな人からの意見を聞き、調整する必要があるため、ストレスのかかる立場だといえます。意見をまとめあげ最善策を見つけることに充実感を覚えられる人は、プロジェクトマネージャーに向いているでしょう。
■ コミュニケーション能力が高い
プロジェクトマネージャーは、チームメンバーや経営陣、クライアントなど、さまざまな人と関わります。プロジェクトを成功させるためには、誰とでも積極的にコミュニケーションを取り、良好な関係を築き上げなくてはなりません。多くの人をつなぐ役割があるため、強いこだわりがなく、誠実に対応できる人が向いているでしょう。
プロジェクトマネージャーとして採用されるには、IT職種で経験を積んでキャリアアップしていくのが一般的です。プロジェクトマネージャーにはITの知識も必要になるため、IT職種での経験は後に活かされるでしょう。
エンジニアの仕事には、いつまでに何をするか計画をたてる上流工程と、実際に製造を行う下流工程があります。まずは下流工程の業務を通してプログラミングの工程などITスキルや知識を身につけます。続いてクライアントとの接点もある上流工程の業務に携わることで、マネジメント力や網羅的な知識を取得できます。
十分な経験を積んだら、次に考えられるステップはプロジェクトリーダーです。コミュニケーションスキルやマネジメント力を培うことで、ゆくゆくはプロジェクトマネージャーの道が開けるでしょう。プロジェクトマネージャーになるために不足している部分は、資格を取得し、スキルアップや評価アップにつなげると良いです。
■ PMO
PMO(Project Management Office)は、プロジェクトマネージャーの活動をサポートするのが役割です。プロジェクト間のコスト調整や人材開発のための研修実施など、プロジェクトがスムーズに行くよう環境を整えていきます。
プロジェクトマネージャーへのキャリアアップに活かせる他、プロジェクトマネージャーを退いて若手のマネージャーを育てる立場としても有効なキャリアです。多くのプロジェクトマネージャーは、シニアプロジェクトマネージャー、プログラムマネージャー、ポートフォリオマネージャーへとキャリアアップをし、プロジェクト数やステークホルダーのレベル、プロジェクトの価値を高めていきます。
■ ITコンサルタント
ITコンサルタントは、IT技術を駆使してクライアントの課題を解決するプロフェッショナルです。プロジェクトマネージャーはクライアントからの受注後にプロジェクトの人員や納期などを管理しますが、ITコンサルタントはクライアントからの聞き取りや提案など受注につなげる段階を主に担当します。プロジェクトマネージャーよりも上流の工程を担当するため、マネジメント力やリーダーシップといったスキルを活かせます。
ITコンサルタントになるには、ITインフラストラクチャーやクラウドコンピューティングシステム開発など、よりIT技術に特化した知識が必要です。クライアントの課題が解決できるよう、幅広い知識があると良いでしょう。
■ ITスペシャリスト
ITスペシャリストは、技術面でプロジェクトを支える職種です。ネットワークやセキュリティなどプロジェクト内の専門分野において技術的なサポートするため、ITシステムの構築や運用など、より高度な専門知識・技術が必要です。マネジメントは基本的に行わないため、全体の管理よりも専門技術に興味のある人に向いています。
なお、ITスペシャリストへキャリアアップするには、ITスキル標準(ITSS)のレベル3以上のスキルを最低1つ習得していることが必要です。
■ CxO
「CxO」は「x」の部分に業務名が入ることでそれぞれの業務の最高責任者を示す言葉です。例えば「CTO」は「T」が「x」の部分に入ることで「Chief Technology Officer」となり日本語では、「最高技術責任者」という意味になります。
CTO以外にもCIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)といった、技術系の最高責任者を目指すことも可能です。既存のIT知識だけでなく、AIやIoTなどの最新技術に関する知識や戦略立案の能力なども必要になります。
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの責任者としてチームをまとめる存在です。プレッシャーを感じる仕事ではありますが、プロジェクトを成し遂げたときは、他のポジションにはないやりがいを感じるでしょう。
プロジェクトマネジメントスキルや問題解決能力など、求められるスキルが高いため、知識と経験を積むことが大切です。資格を取得して必要なスキルを補いながら、プロジェクトマネージャーを目指しましょう。