目次
- 転職で給与があがった人は約4割。しかし…?
- 企業から聞かれる「希望年収」とは?
- 希望年収について聞かれる理由
- 希望年収を伝えるタイミングと注意点
- 希望年収を伝えるときのポイント
- 希望年収は履歴書に書くべき?
- 面接での希望年収の回答例
- 希望年収のNG例とアドバイス
- 希望年収はどうやって決める?
- 年収アップしたいときの給与交渉のコツ
- よくある質問
その他のお役立ちじょう
面接において希望年収を聞かれるケースが増えてきました。適切に答えられるように、自分の市場価値や業種・職種の相場などを把握しておく必要があります。
本記事では、希望年収の答え方や注意点、金額の決め方について、転職者向けに紹介します。
転職で給与が上がった人は4割弱。しかし…?
厚生労働省の調査によれば、2023年に転職後の賃金が前職より増加した割合は37.2%、減少した割合は32.4%、変わらない割合は28.8%でした。前年より増加の割合は上がり、減少した割合は下がったため、転職による給与アップの傾向が見られます。
しかし、どのくらいの人が転職前に給与交渉をしているのでしょうか。次の項目を見ていきましょう。
参考元:厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」
日本ではそもそも給与交渉する人が少ない
日本では給与交渉を積極的に行う人が少ないといわれています。諸外国と比べて、給与交渉を行う人の割合が低いというデータもあります。提示された条件をそのまま受け入れる人が多く、適正な給与を得るチャンスを逃しているケースも少なくありません。
その背景は、日本人の気質として「お金の話をするのは失礼」という意識があるからです。「強く主張すれば内定が取り消されるのでは?」と不安を抱える人も多くいます。また、海外では求人票に給与が提示されていないこともあるのに対し、日本ではあらかじめ提示されているのが一般的なことも、給与交渉の習慣が育まれなかった要因でしょう。
しかし、適正な給与を得るには、給与交渉は妥当な行為です。とくに、スキルや実績がある人は、給与交渉で自分の市場価値を正しく伝えることで、より良い条件を得られる可能性が高いです。それは企業にとっても質の高い人材を確保するために必要なことといえます。
とは言え、お金の話を切り出すのは良くないという日本の習慣が、今なお根付いていることも事実です。そのため、自分から給与交渉はするのではなく、企業から希望を聞かれたときにするのがベストでしょう。その際は「給与を上げてほしい」と単にお願いするのではなく、「これまでの経験や実績から、これだけの価値を提供できる」と説得力のある主張をすることがポイントです。
企業から聞かれる「希望年収」とは?
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希望年収とは、「総支給額」と「手取り額」のどちらを意味するのでしょうか。正しくは、総支給額です。もらう側は手取りで考えてしまいがちですが、企業は払う側なので総支給額で考えます。総支給額とは、税金や社会保険料が差し引かれる前の金額であり、源泉徴収票の支払金額のことです。交通費や残業手当、住宅手当なども、総支給額のなかに含まれます。
企業から希望年収を聞かれたら、総支給額であることを確認したうえで希望を伝えるようにしましょう。
希望年収について聞かれる理由
希望年収について聞かれる理由は、応募者の希望と採用条件がマッチしているか確認するためです。また、自己評価の一環として聞く場合もあります。具体的に説明します。
応募者の希望と採用条件がマッチしているか確認するため
企業が応募者に希望年収を確認する最大の理由は、企業の提示する条件が応募者の希望とマッチしているか判断するためです。応募者が企業の予算を大きく上回る年収を希望した場合、たとえ優秀な人材でも採用が難しくなります。
自己評価やスキル評価の一環として
応募者と給与をすり合わせる目的もありますが、応募者が自分のスキルや経験をどのくらい把握し、客観的に評価できるかを見るために聞かれる場合もあります。年収を交渉するというより、自己PRの一環として捉えても良いでしょう。
企業は提示された希望年収によって、自己評価の高さやキャリア観を判断しているのです。例えば、相場より低すぎる年収を提示した場合「スキルが足りていないのでは?」と思われてしまいます。逆に高すぎる年収を希望すると「実力を把握できていない」と判断されます。
このように、希望年収を伝える際は、自分のスキルや実績、市場価値を客観的に分析し、適切な金額を提示することが重要です。また、金額の根拠を説明できるように準備しておくと、面接での評価が上がります。
希望年収を伝えるタイミングと注意点
転職時に自分から給与の話題に触れる場合は、タイミングに注意しましょう。ベストなのは最終面接前後です。最終面接時の逆質問を利用しても良いでしょう。いきなり給与のことを聞くのではなく、業務内容や社風などの質問をし、企業のことを理解してから切り出すのがおすすめです。
早い段階で話を持ち出すと、「お金のことばかり気にしている」とネガティブな印象を持たれる可能性があります。一次面接などでは、自己PRやスキルのアピールに集中することが望ましいです。
企業側から希望年収を聞かれたときに答えるのが、企業にとっても応募者にとっても一番負担のない方法です。最終面接や内定後に、企業側から話を持ちかけてくる可能性もあります。交渉は焦らずに、自分が転職先で実現したいことを伝えたり、実現できる環境か見極めたりすることを優先しましょう。
希望年収を伝えるときのポイント
希望年収を伝える際は、求人票の記載金額や前職の年収をベースにし、適切な金額を提示します。「希望年収は〇〇万円ですが、御社の給与体系に応じて柔軟に対応いたします」と伝えることで、企業への配慮を示すことができます。
希望年収をレンジで伝える
希望年収を伝えるときは、「〇〇万円〜〇〇万円を希望しています」といったように、年収に幅を持たせたレンジで伝えるのも効果的です。幅を設けることで企業側に選択の余地を与えつつ、自分としても柔軟に対応する姿勢を示せます。下限金額は、自分が納得できるラインに設定しておくとよいでしょう。
現職や前職の年収をベースに答える
現職や前職の年収も、希望年収を決める基準の一つです。企業の中には、人材を確保するために現職や前職の年収は最低限保証したいと考えているところもあります。そのため、現職や前職の年収を伝えることは、希望年収の根拠に説得力を生みます。例えば、「現在の年収が〇〇万円なので、同程度の年収を希望いたします」と現職の年収をベースに答えるのが好ましいです。
年収アップを希望する場合は理由や根拠も伝える
年収アップを希望する場合、単に給与を上げてほしいと伝えるのではなく、理由や根拠を明確に伝えることが重要です。納得できる説明がなければ受け入れてもらえない可能性があります。例えば、「前職で売上を前年比120%伸ばし、御社でも同様に貢献できる」「現在の年収が〇〇万円ですが、相場を調査したところ、同スキルでは〇〇万円が一般的」などと説明します。
丁寧に逆質問をする
希望年収について話す際、金額を提示する前に、企業側の予算感を確認するための「逆質問」も有効です。たとえば、希望年収を聞かれたタイミングで、「このポジションにおける御社のご予算感をお伺いしてもよろしいでしょうか?」といった聞き方をすることで、企業が想定しているレンジを把握できます。企業によっては、求人票に記載している金額に加えて、実際の想定年収に幅がある場合もあるため、確認しておくことでミスマッチを防ぐことができます。
自信を持って答える
希望年収を伝える際は、自信をもって堂々と伝えることも大切です。曖昧な態度や遠慮がちな言い方をすると、企業側もその額が妥当なのか不安になってしまいます。強気な態度も好ましくないですが、「これまでの経験やスキルを考慮し、500万円以上を希望しています」と理由を添えて明確に伝えることで、企業と対等な交渉ができます。
面接での希望年収の回答例
面接で希望年収を伝える場合、状況に合わせて適切な表現を選ぶことが大切です。企業の意向に沿う場合や現職より年収アップしたい場合など、4つのシチュエーションを紹介します。
求人票の給与レンジ内で収めたい場合
最低希望額を伝える場合は、理由も説明しましょう。最終的に企業の意向に従う旨を伝えておくと好印象を得られます。
回答例
「御社の求人票に記載されている年収レンジを拝見し、その中で検討しております。具体的には〇〇万円~〇〇万円を希望しておりますが、御社の評価や給与体系に応じて柔軟に対応いたします。」
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現職の年収を維持したい場合
年収を維持したい場合は、現職の年収を正直に提示します。
回答例1
「現職では年収〇〇万円をいただいており、これまでの経験を活かす前提で、同等の待遇を希望しております。」
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回答例2
「現在の年収が〇〇万円ですので、それを維持できればと考えております。御社での貢献度に応じてご判断ください。」
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現職より年収アップしたい場合
現職よりも年収アップしたい場合は、明確な理由を示すことが重要です。過度な年収アップを図らず、求人票に記載されている範囲内になるべく留めるように意識しましょう。
回答例1
「現在の年収は〇〇万円ですが、希望年収は〇〇万円~〇〇万円を想定しております。これまでに〇〇のプロジェクトで売上120%を達成した実績があります。加えて、マネジメント経験も豊富に積んできましたので、これらのスキルを活かして御社でも大きな成果を出せると考えております。御社の規定に従い柔軟に対応いたしますのでご検討ください。」
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回答例2
「現職では年収〇〇万円をいただいておりますが、〇〇万円~〇〇万円程度を希望いたします。現職では企業の業績悪化により、ここ数年昇給がありませんでした。新規顧客開拓で年間〇社以上の契約を獲得したことと市場の相場も踏まえ、こちらの額を出させていただきました。御社の評価制度や成果に応じてご検討いただけますと幸いです。」
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年収ダウンの可能性がある場合(未経験職種など)
未経験の職種に挑戦する場合は、これまでの年収よりも下がる可能性があります。そのため、希望年収を伝える際は「最低限必要な金額」をベースにしつつ、成長機会やキャリアの広がりを重視している姿勢を示すことが大切です。あらかじめ生活に支障のない範囲を見極めておき、現実的な希望を伝えましょう。
回答例
「未経験分野への挑戦となるため、現職より年収が下がる可能性も理解しております。〇〇万円~〇〇万円を考えておりますが、御社での成長機会を最優先に考えています。」
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希望年収のNG例とアドバイス
希望年収を伝えるときは、適切な金額でなければ、採用担当者にマイナスの印象を与える可能性があります。相場と大きくかけ離れた金額を提示したり、年収アップの根拠が不明確であったりしていないか注意しましょう。
低すぎる・高すぎる希望年収を伝える
市場相場や自分のスキル・実績に見合わない金額を提示すると、採用担当者に不信感を与える可能性があります。低すぎる金額を提示すると必要なスキルがないかもしれないと見なされ、高すぎても客観的に自己評価できない人だと思われてしまいます。また、給与相場を知らないことから、常識がなく企業研究が足りない人とも判断されかねません。とくに高すぎる給与は企業の予算や社内の給与体系と合わず、選考の対象外になる可能性が高いです。
業界・職種の平均給与を調査したり、転職エージェントを利用して自分の市場価値を正しく理解したりするなど、適切な範囲を把握しておくことが重要です。
年収アップを希望する理由や根拠が曖昧
年収アップを希望する場合は、企業に納得してもらうために、なぜその金額に至ったのか理由や根拠を明確に提示しなければなりません。根拠として好ましいのは、現在の年収や業界の相場などです。前職で得た経験や実績を根拠にする場合は、その経験をどのように活用し企業に貢献できるか伝えることもポイントの一つです。
子供が産まれる、生活費の増加があるなど個人的な理由は、年収アップの理由としてふさわしくありません。その場合は、扶養手当や住宅手当など、手当に関する会社規定を確認してみると良いでしょう。
途中で希望年収額や理由を変更する
選考が進むごとに希望年収を変更したり、理由をあいまいにしたりすると、信頼を失う可能性があります。例えば、最終面接では「希望年収は520万円です」と伝えていたのに、内定後には「やっぱり560万円を希望します」と変更すると、一貫性のない人だと人間性を疑われてしまいます。
どうしても希望額を変更したいときは、「面接でのお話を伺い、業務範囲が当初の想定よりも広く感じたため、希望年収を〇〇万円程度に見直したいと考えております」というように、納得のいく根拠をセットで伝えましょう。
希望年収はどうやって決める?
希望年収は、自分の市場価値や業種・職種ごとの平均年収などから、適切な金額を見極めます。また、応募先の企業が設定している給与基準や求人票に記載された給与額も参考にしましょう。
これまでの実績やスキルなど自己分析を行う
希望年収を決めるときに最も重要なことは、自分の実績やスキルに見合っているかどうかです。年収は労働の対価として支払われるものなので、金額に見合う価値がなければ採用されません。未経験の分野に挑戦する場合は、経験や実績が乏しいため年収が一時的に下がることも覚悟しておきましょう。
まずは、自分のキャリアを振り返り、どのような実績を残したか、どのような業務に携わってきたのか整理しましょう。例えば、営業職であれば売上目標の達成率や新規顧客獲得数、マーケティング職であればキャンペーンの成果やブランド認知度向上への貢献など、具体的な数値やエピソードを挙げて自己分析を行うのがポイントです。
また、実績だけではなく、今後のキャリアプランや身につけたいスキル、活躍したい分野なども考慮しましょう。企業側はその人の今後の可能性も見て、給与を決定します。
業界・職種の平均年収を調べる
希望年収を決めるときは、業界・職種ごとの平均年収を把握する必要があります。希望年収が高すぎたり、低すぎたりするのを防ぐのに役立ちます。
平均年収を調べる方法としては、厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」や「ロバート・ハーフの年収ガイド」がおすすめです。ロバート・ハーフの年収ガイドでは、職種ごとの年収一覧だけでなく、需要の高いスキル・資格、求人の多い業界、採用市場の見通しなども紹介しています。
経理・会計・財務、金融、テクノロジー、業務改革、人事、サプライチェーン分野の情報に特化していますので、同分野への転職の際はぜひ参考にしてください。
応募先企業の平均年収、求人の記載額を基準にする
応募先企業の給与水準を把握し、その基準に沿って金額を提示することも大切です。同じ業界や職種であっても、企業ごとに給与体系や昇給制度が異なります。
応募先企業の平均年収を調べる方法としては、求人情報や企業の採用ページなどです。「調べてもわからない」「より詳しい情報を知りたい」という場合は、転職エージェントを利用するのがおすすめです。企業の給与レンジ内で交渉すれば、希望年収が実現しやすいでしょう。
年収アップしたいときの給与交渉のコツ
年収アップしたいときの給料交渉のコツは、実績や成果を数字で表すことです。売上の向上にどれだけ貢献したか、新しいプロジェクトを成功に導いた経験があるかなど、具体例を交えながら数字を用いて伝えることで、相手に伝わりやすくなります。
実績が数字で表れない業務だった場合でも、どのような業務をこなし、仕事にどう向き合ってきたかを伝えることが大切です。
また、直接給与交渉する自信のない人は、転職エージェントを利用するのも一つの手です。転職エージェントであれば、企業の内情や転職市場について詳しいため、希望年収が妥当かどうかも判断してもらえます。
よくある質問
希望年収についてのよくある質問を紹介します。
希望年収を低く言ってしまった場合、後で訂正できる?
希望年収を低く言ってしまった場合でも、後で訂正することは可能です。ただし、一度提示した希望年収を変更することで、一貫性のない人だとマイナスの印象を与えてしまうこともあります。企業側がすでに低い希望額を採用条件として進めているかもしれないため、訂正を申し出る場合は相応の理由を用意する必要があります。
「面接で仕事内容を深く理解し、相場と照らし合せたうえで、〇〇万円程度が妥当かと考えました」など、謝罪の言葉も添え丁寧に伝えるとよいでしょう。
面接で希望年収を高く言ってしまった場合はどうなる?
面接で希望年収を高く言ってしまっても、客観的な根拠をもとに説明し、企業がその金額を妥当と判断すれば問題にはなりません。企業側は応募者の実績やスキル、前職の年収や、企業の給与基準などをベースに総合的に判断しています。
ただし、採用条件に合わない場合は不採用になってしまったり、希望年収よりも低い額を提示されたりする場合があります。万が一高く言いすぎたと感じた場合は、「業界相場や企業の評価基準に応じて柔軟に考えています」といったフォローを入れるようにしましょう。
希望年収が通る可能性はどれくらい?
希望年収が通る可能性は、企業の状況や給与交渉の進め方などによって異なります。具体的な根拠をもとに適切な金額を伝えられれば、通る可能性は高くなります。
しかし、採用に多くの予算をかけられない企業や、給与テーブルが細かく決まっている企業などでは通る可能性が低くなるでしょう。ある程度幅を持たせて希望年収を設定しておくと、気持ちも楽になります。
希望年収や年収交渉について転職のプロに相談しませんか?
レジュメを提出して、相談する
年収の交渉のし方に悩む人は少なくありません。業界の相場、前職の年収や実績など、希望年収の根拠となるものを見つけていくと、自信につながります。給与体系は企業によって異なるため、希望が通らないこともあると念頭におくことも大切です。
より確実に年収交渉を成功させたい人は、転職エージェントを利用しましょう。転職エージェントを利用すれば希望額が伝えやすくなり、適正な希望年収についてアドバイスがもらえます。
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