メンター制度とは、新卒採用や中途採用といった新入社員に対して行われる育成手法の1つです。すでに多くの企業で導入されており、高い効果が得られることも実証済です。
しかしながら、企業によっては期待以上の成果に結びつかず、失敗に終わったという声も少なくありません。とりわけメンター制度は人に紐づく施策であるため、成功例を単に真似ねるのではなく、企業文化や組織体制に合わせて調整しなければ、十分な成果は得られないでしょう。
そこで今回は、メンター制度を実施する際に企業が陥りがちな失敗例を5つ紹介します。失敗例をあらかじめ知っておけば、自社が失敗するリスクを遠ざけることができます。これからメンター制度を導入される企業や、思うような成果に繋がっていない企業はぜひ参考にしてください。
メンター制度とは?
そもそもメンター制度とは、先輩社員が新入社員と1対1の面談を実施し、不安や悩みの解消に向けた精神的および実践的なサポートを行う手法です。企業によっては、新入社員に限らずキャリアの浅い若手社員や新人マネージャーに対して行われる場合もあります。
メンター(助言者)はメンティ(受け手側)に対して、組織や業務に必要な知識の提供はもちろん、職務上の不安やストレス解消を図ることで、モチベーション維持やパフォーマンス向上が期待されます。
さらに、メンター制度を通じて社員一人ひとりの就業満足度が向上すれば、社員同士の信頼関係の構築や、社内コミュニケーションの活性化にも繋がるでしょう。より良い組織文化を築くことで、優秀な人材が定着し、高い業績を上げるチーム形成に貢献します。
メンター制度の失敗例5つ
対人コミュニケーションを通じて実施されるメンター制度は、本質を見誤ると逆効果になりかねません。表面的な施策にならないためにも、企業が陥りやすい失敗例を見ていきましょう。
失敗例1:行き当たりばったりでペアを組む
メンターとメンティのペアを決める際、「その場の思いつき」や「くじ引き」で行った場合は失敗する可能性が非常に高くなります。なぜなら、人それぞれ性格の相性がありますし、乗り気でない人にメンター役を無理にお願いしても、メンティとの深い信頼関係が築けないためです。
即席で無理やりペアを組むのではなく、まずはメンターとなってくれそうな人物を社内で探すことから始めましょう。もちろん、だれもが快くメンタープログラムに協力してくれるわけではありません。メンター制度に対する興味・関心度合いを測りつつ、メンター制度の趣旨に賛同し、熱意を示してくれる人に直接働きかけましょう。
メンター役の目星が付いたら、次はメンティ候補者を選定します。対面ヒアリングまたはアンケートを通じて以下を尋ねるのが有効です。
- キャリア成長に向けて現在興味があることは何か
- 中長期的な目標やゴールに掲げていることは何か
- 現在の職務上で不安や悩みを抱えていることは何か
- メンターとの関係で期待することは何か
メンターとメンティの候補者を選定したら、実際にペアを組んでいきます。その際、以下の点に留意しましょう。
- 社内キャリアや年齢をなるべく離す(メンターを年上にする)
- 個々の価値観、性格の相性などを考慮する
年下が年上のメンターになると上手く関係を築けない場合は少なくありません。また、明らかに相性があわない場合は逆効果になりますので注意しましょう。
失敗例2:メンターの役割を明確にしない
企業がメンターに求める役割は組織によって異なります。例えば、日々の生活面から指導する「ライフコーチ」としての役割なのか、それともお互いにゆっくりコーヒーでも飲みながら相談に乗るような「良き先輩」としての役割なのか。
いずれの場合にせよ、メンター制度を導入する際は、「メンターの役割」を明確にすることが重要です。メンターの役割を理解しないまま進めると、メンターによって対応の差が生まれ、組織としてのゴールを達成できなくなります。
ただし、メンターの役割はメンティの管理・監督ではありません。あくまでもメンティに対するアドバイスや悩みの解消が目的です。業務内容を指示したり、進捗を確認して適宜指導したりするのは、あくまでも直属の上司の役目ですので混同しないようにしましょう。
また、メンターとメンティの関係は一定の期限を設けるべきです。設定した期限を迎えた際は、継続するか終了するか、双方の合意をもって決めていきます。
失敗例3:セッションに十分な時間を与えない
メンター制度のセッションは本業の合間に行われることが大半です。そのため業務が忙しくなると、セッション時間は犠牲にされがちです。セッション時間への遅刻や中止が続くようになれば、次第に優先順位が下がり続け、本来の目的やゴールを果たせないまま形骸化してしまうでしょう。
メンター制度を成功させるために重要なことは、両者がセッションの優先度を高く保ち続けることです。セッション開催日時はあらかじめスケジューリングし、参加を前提に扱います。
就業時間中に時間がとれなければ、所属部門の予算からランチ代を補助してもらうのも一案です。リモートワークなどで直接対面する機会がない場合は、Zoomなどを使ったオンラインミーティングや電話セッションで代替しても良いでしょう。
リモートで従業員のオンボーディングを行うポイントはこちらをご覧ください。
失敗例4:メンター制度を一方通行の関係として扱う
メンター制度の目的はメンティの自立を促すことです。学校の授業のように、メンターが教えることに対してメンティが一生懸命メモを取り続けるといった、一方通行のコミュニケーションではありません。効果的なメンタリングの進め方は「対話」と「意見交換」です。
メンター側にとっても、メンティの鋭い洞察や現場の問題点などの情報が得られる機会でもあります。主従関係ではなく、対等な関係としてメンティに目線を合わせることを意識しましょう。
失敗例5:定期的な検証・改善をしない
優れたメンター制度を構築するためには、一度を作ったものを運用し続けるのではなく、継続的な検証と改善が欠かせません。なぜなら、メンティの課題やメンターに対する期待値は成長とともに変化するからです。
人事部門などメンター制度の管理者は、定期的にメンター制度の対象者とコミュニケーションを図りながら、運用状況や課題点などを整理し、適切に改善を図ることが大切です。
例えばメンティがキャリア成長を遂げ、担当メンターが役割を果たした場合は、管理者はメンタリングを終了させ、新たなメンターを探すサポートをします。
まとめ
メンター制度は、経験豊富なメンターが、業務経験の浅いメンティに対して行う成長支援策です。ただし、方法論や技術を教えるだけがメンターの役割ではありません。メンティがどこに不安や悩みを抱えているかを、対話を通じて探りながら、メンティが自力で課題を解決できるようにサポート役に徹することが大切です。
企業は常にメンターの役割を明確にしましょう。もし、上手くメンターの役割を言語化出来ない場合などや、メンターに適した人物が社内に見当たらない場合は、是非ロバート・ハーフのコンサルタントまでご相談ください。貴社のビジョンやご希望をお伺いした上で、最適な人材ソリューションを提案いたします。
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